想元紳市ブログ

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『藍宇 〜情熱の嵐〜』その3

この映画の持つ魅力とはいったいなんだろう?
決してメジャーではない、10年近く前のゲイ映画だというのに、いまだに最低3日に1回は、キーワード検索でこのブログに辿り着かれる方がいらっしゃる。
確かに、この映画に一度はまると、ある種、魔物にとりつかれたような状態になる。

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久しぶりに観て、改めて気付いたのは、胡軍の、あえて台詞がないときの演技の味わいだ。

別れ話で「僕はこの家で待たないよ」と藍宇に言われたとき。
泣きながら荷物をまとめる藍宇を見つめる顔。
事務所に来た公安警察よりも、藍宇を心配する顔。
台所に立つ藍宇を見にやってきて、手持無沙汰に突っ立っているとき。

藍宇は、先回りしてあれこれ考え込んでしまうタイプである。捍東より大人だが、「愛してほしい」タイプだ。
一方、富裕層の子息である捍東は、どこか子供のように無邪気なところがあり、感情がすぐ表に出てしまう、「愛したい」タイプである。

例えば、藍宇の家で、酔っぱらってソファに寝込んでしまう捍東。
よりを戻したいとは言いだせず、ぐずぐず居座って、帰ろうとしなかったであろう捍東は、いじらしいほどに可愛く思えただろう。
留置場から出てきた捍東のお祝いパーティーで、子供のようにはしゃぐ捍東と、それを諌める藍宇。
捍東は、藍宇のようなタイプが、まさしく惹かれる男である。

スタンリー・クアン監督の、いかにもゲイ的な感性に溢れたシーンの数々。
繊細な演出には、様々な意味が込められていたことにも気づく。

大学構内で、立ち話する二人の間をやたら人が通る。微妙に離れた、二人の間の距離が強調される。
そのあと、捍東が近づいてマフラーをかけてあげるときの短いカット割りが、二人の心が寄り添っ瞬間を見事に表現するのだ。

別れ話のとき、二人の前にしっかりと存在感を持って置かれている赤ワインは、捍東の婚約者の存在を意味するものだろう。
のち、離婚した捍東は、もはやワインではなく、ビールをひたすら飲む男になっている。
最初の頃はウィスキーばかり。
捍東の飲む酒は、彼自身の変化を象徴している。

エンディングのブルーの景色が流れるシーン。
工事囲いのような青い障害物のため、その向うの景色はよく見えない。
青い障害物が途切れて、やっと向うの建物がはっきり見えたとき、この映画は終わる。

青いものは物事の表層、そして、その向うの景色は、奥底にある真実だと考えるとどうだろう。
真実がやっと掴めたとき、人生というものは終わってしまうのだ。


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