想元紳市ブログ

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ベルンハルト・シュリンク『朗読者』

シュリンクの『朗読者』を読んだ。
映画『愛を読むひと』の原作で、ドイツでは『ブリキの太鼓』以来と言われる世界的な大ベストセラーである。

15歳の「ぼく」は、路上で体調を崩した自分の面倒を見てくれたことがきっかけで、一回りも年上の女性ハンナと恋に落ちる。
人知れず逢瀬を重ね、そしてなぜかいつも本の朗読をねだるハンナ。
ところが、突然「ぼく」の前から姿を消す。

数年後、法律を学ぶ「ぼく」は、裁判所で、ナチの戦犯の一人として被告席に座っているハンナの姿を見つける。
判決は、無期懲役。それは、ハンナがある事実を隠し通したためであり、「ぼく」だけが、その秘密に思い当たる。

刑務所に服役しているハンナに、「ぼく」はひたすら、朗読したテープを送り続ける、何年も何年も……。
そして18年後、恩赦により服役を終えたその日、悲劇がおこる。

原作は、映画より、ずっと重く感じられる。
罪とは、人の原罪とは、過去の罪を償うは、恥とは、責任とは……。

ハンナは法廷で、自身の罪状を認めたあと、裁判長にこう問い返す。

「わたしが言いたいのは……あなただったら何をしましたか?」

これは、紛れもなく著者が読者に向けた問いであり、「ぼく」も、深い苦悩と内省の歳月へと陥っていく。

彼の次の言葉がいい。

「幸せというのは、それが永久に続く場合にのみ本物だというのか? 辛い結末に終わった人間関係はすべて辛い体験に分類されてしまうのか? たとえその辛さを当初意識せず、何も気づいていなかったとしても? でも、意識せず、認識もできない痛みというのはいったい何なんだろう?」

服役したハンナと「ぼく」の、間接的なのに濃密なふれあいには、涙を止めることができなかった。

ちなみに、映画『愛を読むひと』は、去年劇場公開された映画の中で、自分のベスト1である。

 
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