想元紳市ブログ

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山田風太郎『人間臨終図巻』

本書は全3巻に分かれている。
Ⅰは15歳から55歳で死んだ人、Ⅱは56歳から72歳、Ⅲは73歳から100代で死んだ人。
総勢900名以上の世界の著名人の臨終が短くまとめられているのである。

様々な評伝や、臨終に立ち会った近親者・知人の文章を引用。
読み応えがあるのは、単に事実の羅列にとどまらず、娯楽小説の大家らしい一言やエピソードを添えている点だ。

たとえば、歌人の伊藤左千夫。
大きな体格を持ち、12人の子供を一人の妻に産ませ、傲慢な性格で有名だった左千夫の臨終については、弟子斉藤茂吉のコメント、
「寝棺におさめる前に、清い湯で先生を拭いてあげた。先生の男根は僕が想像していたよりもっと小さかった」
を引用し、さらに山田は、
「茂吉自身、自分の男根の小ささを気にしていたので、このことが目にとまったのだろう」と書く。

また、銭型平次で有名な大川橋蔵の臨終については、未亡人の葬儀での挨拶を引用。
「主人はたった一つの宝はお前だっていってくれました。主人の楽しみは、女房をきれいにして連れて歩くことだ、と常にいってくれました」
そこに、山田はこう書き足す。
「と、芝居ががった挨拶をしたが、それは烈しい恋愛合戦の末に祇園の芸妓から妻となった彼女の、かつてのライヴァルたちに対する勝利宣言であったろう」

昨日は、ミュージシャンの加藤和彦自殺のニュース。
同じ死でも自殺の衝撃は後味が悪い。

思い出すのはサガンの言葉だ。

「自殺とは他人に自分の死を押しつけることである」

まったくもって事実だと思う。

  

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