想元紳市ブログ

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佐藤洋二郎『ミセス順』

佐藤洋二郎の短編『ミセス順』を読んだ。

表紙に描かれた、どことなく女々しい男の後姿からわかる通り、ミセス順は主人公の親戚である「おとこおんな」の男性だ。

15歳のとき、田舎を飛び出し、東京に出た「わたし」が、35年ぶりに故郷に帰る。
ミセス順に会って、あることを確かめるために……。

田舎町の好奇な視線など意に介さず、派手な格好と化粧で普通に暮らしていたミセス順。
「わたし」が田舎を出る日、ミセス順は駅のホームで一冊の本をくれ、それは人生の大事な宝物となった。
なのにずっとミセス順を避け続けてきた「わたし」。

故郷の老人ホームでの再会。
年老いたミセス順が、「わたし」に言う。

「結局、ひとり、ひとり、でもひとりなのよね。人間はいくら助け合ってもひとりということなの。人が集まっても、ひとり。集まれば集まるほど、ひとり。だったらひとりのほうがいいでしょう? そういうことだけはわかったわ。いまの命が終わっても、すぐに別の物に生まれ変わるでしょう?わたしはまた、いまとおなじように生まれ変わりたいわ。今度は堂々と生きてみたい。極楽浄土なんか決していかないわ」

この短編を読んで、唐突に思い出したのは、数年前観た『ヨコハマメリー』という映画だ。

横浜の人なら知らぬ人はいないという、白塗の厚化粧をし、ドレスを纏ったホームレスの老女メリーさんを追ったドキュメンタリーである。

メリーさんは、進駐軍相手の娼婦だった。

そして、映画のもう一人の主役が、永登元次郎さん。
お化粧をし、明らかにこちらの側の人だとわかる永登さんは、場末のシャンソン歌手だ。
猫と暮らし、メリーさんと交流のあった数少ない友人の一人だった。

映画は、横浜から姿を消したメリーさんが、ある地方の老人ホームにいることが判明し、永登さんが訪ねて再会するシーンで幕を閉じる。

永登さんは、インタビューの中で、ミセス順とまさに同様の話をしていた気がする。

ちなみに、映画の撮影の後まもなく、お二人とも相次いで亡くなってしまわれたらしい。

 
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