想元紳市ブログ

2017年09月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年11月
TOP ≫ 宮本輝『流転の海 第五部 花の回廊』

宮本輝『流転の海 第五部 花の回廊』

宮本輝の長編連作、『流転の海』の第五部『花の回廊』をやっと読んだ。

第一部が出版されたのが1982年だから、既に25年以上続いていることになる。
今のところ、第七部で完結の予定らしい。

終戦後の日本を舞台に、闇市からのし上がる松坂熊吾と妻の房江、熊吾50歳で授かった一人息子・伸二の物語だ。
3人は、幾多の波乱を乗り越えながら、たくましく、したたかに生きていく。

本作の魅力はなんといっても、圧倒的な熊吾の存在感にある。
広い肩幅、厚い胸板、野性的な魅力にあふれながら、繊細な弱さも併せ持つ熊吾に、男として惚れてしまう。
マッチョで男らしい言動は、性的アピールにも溢れている。

また、妻房江の魅力が、なんともゲイ心をそそるのだ。

例えば、こんなくだり。

息子の伸二が急病になり、やむなく働き先の飲み屋「お染」の女将に休ませてくれと電話すると、女将から嫌みを言われる。そこで、房江はこう思う。

「私の代わりは掃いて捨てるほどいるだと? お染の売り上げが増えた理由を知らないはずはあるまい。私がお染の客においしい料理を出すようになったからだ。(中略)私が勤める前と後との月々の売り上げを比較してみるがいい。盛りをとうに過ぎた女の自分を売り物にするなら、もう少しおつむを磨くことだ。まさか、自分の色気が客を呼んでいると思い違いをしているのではあるまいな。
 房江はタネの住まいに戻りながら、私が辞めたら店をやっていかれなくしてやろうと、いたずらを企む子供のように計略を練り始めた。私の料理で、あの垢抜けないバーを連日満席にしてから辞めてやると決めたのだ」

まるで、意地悪なママのいるゲイバーの気の強い店子のようだ。

タイトル『花の回廊』は、伸二がいっとき世話になる、在日韓国人の多く住む雑居ビルを象徴している。
ビルの名は「蘭月ビル」、そこに住む絶世の美少女が「咲子」である。

この小説は1990年に一度映画化されたが、見事に失敗した。
熊吾を森繁久彌が演じたと聞くだけで、小説の愛読者は違和感を覚えずにはいられないだろう。

 
スポンサーサイト

Comment


Comment Form













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL