想元紳市ブログ

2017年06月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年08月
TOP映画 ≫ 『神経衰弱ぎりぎりの女たち』

『神経衰弱ぎりぎりの女たち』

ペドロ・アルモドバルの作品の中で最も好きな『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を久しぶりに鑑賞した。

50年代のVOGUEのような、コラージュした女たちのシルエットにスパニッシュポップスが被るタイトルクレジットから、いきなりアルモドバル・ワールドが全開。
やはり何度観ても、他のどんな映画に比べようもないほど、唯一無二の世界を持った作品だと思う。

95663.jpg

ストーリーはいたってシンプルだ。

音信不通になった同棲中の恋人イバンが旅に出るらしいと知って狂乱する女優のペパを中心に、イバンの他の女やペパの女優友達ら、エキセントリックな女たちが入り乱れてハチャメチャな騒動を繰り広げる。

嫉妬、妄想、不安や怒り……そんな他愛もない感情に突き動かされ、翻弄されるエゴイストな女たちは、ひどく滑稽でありながらもどこか可愛く、そして何より強い。

ここでは辻褄が合わないとか、そんな偶然起こりえないといった横槍は全く意味がない。

例えば、劇中こんなセリフがある。

「奇妙なことは突然起こる」
「物事は決して思い通りに運ばない」

生きていれば当たりまえのことを、アルモドバルはコミカルにデフォルメしているのである。

748785.jpg

ペパを演じたのは、アルモドバルの初期のミューズ、カルメン・マウラ。
エゴを貫き通す、狂った女の強さと弱さを見事に体現している。

アントニオ・バンデラスやロッシ・デ・パルマら常連が勢揃いし、風変りな個性を発揮しているばかりか、アルモドバルの手にかかると、電話交換手の女や薬局の店員ですら強烈な印象を残す。

自分にとって何よりもツボなのは、イバンの昔の恋人ルシアだ。
奇妙なファッションとヘアメイクに負けないぐらいの異常キャラである。
イバンの浮気に心を病んで入院していた病院から出てきたばかりという設定であり、ペパと同じくイバンを探して、大事件を引き起こす。

95665653.jpg

痛烈なドタバタコメディであることに間違いはないのだが、実は裏に骨太のテーマが隠れている。
それを象徴するのが、映画の冒頭に置かれた、ペパのモノローグだ。

「崩れかける世界で、私は自分と世界を救おうとしていた。まるで”ノア”だ。すべての動物をカップルで救ってやりたかった」

神経をすり減らすような混沌を極める世界の中で大事なことはいったい何なのか。

極端に振り切った女たちの姿から伝わってくるのは、意外にも、無様な人間の放つ愛おしさと大いなる女性賛美である。
スポンサーサイト

Comment


Comment Form













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL