想元紳市ブログ

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『ムーンライト』

本命と言われていた『ラ・ラ・ランド』をおさえ、アカデミー作品賞に輝いた『ムーンライト』を鑑賞。
両方観ると、自分には疑問を挟む余地もないほど妥当な選択だったと思える。

マイアミの貧困地区に麻薬中毒の母と住む、ナイーブなゲイの少年・シャロン。
唯一の友達はケヴィン。
この2人が、少年期から20代の大人になるまでを、それぞれ3人の役者が演じていくという3部構成だ。

タレル・A・マクレイニーによるパーソナルな戯曲を、長編2作目のバリー・ジェンキンスが監督。

マクレイニーもジェンキンスも、実際のロケ地にもなった同じマイアミの貧困地区出身であり、主人公のシャロンと似たり寄ったりの家庭で育ったという根幹を共有し合っていることが、本作の大きな力となっていることは間違いない。

もっとも、ジェンキンス自身はゲイではないらしいが。

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極度に内向的でイジメの対象であり続けたシャロンが、ある事件を介し、大きく変化して登場するのが、トレヴァンテ・ローズが演じる第3部だ。

痩せてひ弱だった外見が、強面の屈強なマッチョへと見違えるような変貌を遂げている。
多くのゲイにとって、筋肉とはそもそも、内面を覆う”隠れ蓑”であり、他者と向き合うときの”仮面”であったことを、あらためて思い出させる。

外見ばかりか、仕事は麻薬の売人である。
しかし、それら表向きの顔とは裏腹に、内面は少年の頃のままであり、幼馴染から始まったケヴィンのことを想う気持ちにも変わりはない。

ここに至って、本作が一人の少年の半生を描く物語であるばかりか、実は、この上なくピュアなラブストーリーだったことに気づかされるのである。

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突然、ケヴィンからの電話で再会する2人。しばらく微妙な距離を保ちながら、やがて邂逅し、心を通わせるシーンがとてもせつない。

その意味で、個人的には、第3部が最も好きだった。

全米を代表する陸上選手だったというトレヴァンテ・ローズの武骨さと繊細さを合わせもった演技も魅力的だが、 アンドレ・ホランドが演じる成熟したケヴィンが強く印象に残る。

このケヴィンの穏やかな存在感は、救い難い展開を見せる本作を優しく照らす、言わば”光”である。

シャロン少年の人生を大きく変えることになるドラッグの売人フアンを演じ助演男優賞に輝いたマハーシャラ・アリ、母親を演じたナオミ・ハリスももちろん秀逸だったのだが、自分はどこまでも静かにケヴィンを演じ切ったホランドに軍配をあげたい。
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