想元紳市ブログ

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『(秘)色情めす市場』

日活ロマンポルノの名作を立て続けに鑑賞したのだが、紛れもない傑作だったのが1974年公開の『(秘)色情めす市場』。

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西を代表するドヤ街、大阪釜ヶ崎に生きる、19歳のトメが主人公。
貧困の長屋暮らしで、母のヨネともども、街娼をして生計を立てている。弟のサネオは知的障害者だ。

冒頭、トメがカメラに向かってこう呟く。

「うちな、なんや逆らいたいんや」

男に肉体を弄ばれながらも、決して従属もせず媚もせず、毅然さと自尊を失わずに生きる姿はひたすら逞しく、そして美しい。
それは、男に依存し、そのためには我が子すら犠牲にする母の生き方に対する反抗でもある。

トメは、思春期を迎えつつサネオを、自らの肉体で慰めてやる。他では絶対見せないその表情には、母性とも菩薩とも見て取れる崇高さが漂っている。

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トメを演じたというよりトメ本人としか思えない、芹明香の圧倒的存在感。
芹明香が放つけだるさは、桃井かおりをさらにざらつかせて、武骨にした印象だ。

母を演じたのが、花柳幻舟。口汚く、情けない女になりきって、抜群のうまさがあった。

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村田英雄の「王将」が流れる終盤の一部シーンを除いて、全編陰影の強いモノクロであることからして、いわゆるポルノ映画とは一線を画している。

ゲリラ的に撮影されたという当時の釜ヶ崎など70年代初頭の大阪の光景は、実に生々しいリアリティがあり、それだけでも必見だ。
そして、どのシーンを切り取っても、恐ろしいほどに美しい。
控えめなジャズ風の音楽も秀逸で、田中登監督の強い作家性と映画愛の賜物だろう。

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本作でもうひとり、陰の主役とも言えるのが、宮下順子演じる文江である。
甲斐性のない恋人のため、やがて身を売るようになり、周囲に流されるまま悲惨な末路を迎える哀れな女。

そんな文江の生き方が描かれるからこそ、終盤、いよいよ覚悟を決めたトメの強さが際立ってくるのである。

田中登監督は、元々本作に『受胎告知』と名づけたかったらしい。
それが示すとおり、伝わってくるのは、性の持つ悲哀であり、泥沼に咲く人間の尊厳のようにも思えてくる。

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