想元紳市ブログ

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『楽しい夜』

今や人気作家並みに愛読者の多い翻訳家・岸本佐知子編訳の短編集『楽しい夜』を読んだ。

彼女が翻訳したもので一番好きだったのは、ミランダ・ジュライの『いちばんここに似合う人』。

最も新しい本作でもミランダ・ジュライ作含む、現代アメリカ文学から選りすぐった11の短編が収められている。

10ページにも満たない、アリッサ・ナッティング著『亡骸スモーカー』。
岸本をもってして「個人的には今まで読んだ恋愛小説の中でも五本の指に入る美しさではないかと思っている」と言わしめるほどの秀作。

葬儀場で働くギズモは、人の髪を煙草のように吸うことで、その人の記憶を辿ることができるという不思議な力の持ち主。
最近恋人と別れ、ギズモに惹かれつつある「わたし」が、自分の髪を差し出す。

「おまえの元カレって、ひでえ奴だな」
「俺、だめになった恋愛の記憶を山のように吸ってきたんだよね。だから、そうならないやり方はわかってるつもりだよ」

「わたし」の気持ちが、ギズモに急激になだれ込んでいくラストの描写が詩のように美しい。

「わたしたちがキスをすると、ふいに葬儀場の匂いが、穏やかでつるつるした何かに変わる。二人の呼吸がその上を滑っていけるゼリーのような何か、二人がしずかに死の舞いを舞うあいだ、わたしたちの心臓をそっと止めておいてくれる何かに」

唯一、ゲイを主人公にした短編が、エレン・クレイジャズ著『三角形』。

学会で出張にやってきたマイケルと、同地に住む母を訪ねるため同行してきたウィリー。二人はと共に研究者同士の中年のゲイカップルである。ところが行きの機内で喧嘩し、マイケルは腹いせから宿泊先で別の男と関係をもってしまう。

翌日、学会を終えて空港に向かう途中、浮気の埋め合わせと仲直りのため、骨董屋でウィリーのためにプレゼントを探す。
偶然見つけたのは、ナチの強制収容所で同性愛者が身につけたピンク色の三角形をしたフエルト製のワッペンだった。

空港で待ち合わせた二人は、あっさり仲直りするものの、ウィリーから聞かされたワッペンにまつわる事実と、浮気をした自身の罪悪感から、マイケルは機内で壮絶な悪夢を見るのである。


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