想元紳市ブログ

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『さざなみ』

ゲイの青年二人のつかの間のふれあいを描いた『ウィークエンド』が秀作だったアンドリュー・ヘイ監督の最新作『さざなみ』。

うって変わって、本作の主人公は、45年連れ添った老夫婦のケイトとジェフ。
子供はいないが、豊かな自然に囲まれた一軒家で、愛犬とともに穏やかな余生を送っている。

ところが、大々的な結婚記念パーティーを週末に控えたある日、一通の手紙がジェフに届く。
それをきっかけに、ジェフは、50年前に山で遭難死した元恋人に執拗な想いを馳せるようになる。ケイトは、そんな夫に不信感を抱き、自分の知らない、しかももはや存在すらしない女に対する嫉妬を募らせていく。

平穏だった日常が、見えないところで軋み始めるのだ。

感情のおもむくまま、一人思い出に浸り、妻の気持ちなど思いも寄らない夫。ようやく妻が苛立っていると気付くや、まるで子供のようにご機嫌取りに出る。

妻は、理性でわかっていても、存在しない女に、湧き起こる嫉妬心の持って行き場がない。そんな自分を持て余し、ささいなことに神経をすり減らす。

ベッドの上で眠りにつく前、ケイトは夫に問いかける。「もし彼女が死んでいなければ、結婚していたか」と……。すると、ジェフは素直に「していた」と答えてしまう。

『ウィークエンド』同様、二人がベッドで会話するシーンは、ヘイ監督の最も好むシチュエーションかもしれない。
ベッドの上は、二人にとって極めてパーソナルな空間であり、濃密な時間にもなりうるのだ。

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大勢の招待客に祝福された結婚記念パーティーで、ジェフは妻への愛と感謝の気持ちを感動的にスピーチし、思い出の曲にあわせてダンスに誘う。昨日まで元恋人の思い出に囚われていたことなどすっかり忘れている。
かたやケイトは、表向き穏やかに微笑みながら、ときおり、背筋が凍るような冷ややかな表情を見せる。

45年連れ添っても、結局男と女は、こんなにも違うものなのか。
それでいて、双方の気持ちに共感できてしまうのは、おそらくヘイ監督も自分もゲイであることと無関係ではないだろう。

ケイトの中では、もはや修復できないほど、何かが完全に壊れてしまっていることはほとんど間違いない。
「これからも宜しく頼む」と涙ぐみながら語る夫の願いとは裏腹に、もしかして二人は、この後まもなく破綻する運命にあるのではないか、という不安すらよぎる。

『ウィークエンド』でも感じた、ある種の虚無感が、ヘイ監督の根底には流れているようだ。

シャーロット・ランプリングとトム・コートネイが、揃って、第65回ベルリン国際映画祭で主演男優賞と主演女優賞を受賞したのも納得。とりわけ、老いてなおいっそう知的に美しく輝くシャーロット・ランプリングという女優の存在は、映画界の宝である。

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