想元紳市ブログ

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角達也『男娼の森』

角達也著『男娼の森』は、戦後まもない頃、上野の森に多いときで100名近くいたとされる男娼の実態を綴った小説である。

出版は1949年。つまり、戦後4年目、まさに生々しい実録の小説だということだ。

冒頭から、格調高い文章で、上野の山の物語は始まる。

「世相はめまぐるしく変転をしつづけるが、春になると桜が咲くことには、昔から何のかわりもない。変るものは人間の世相や、人生の味わいばかりだという感慨もよそに、去年の桜が散って、今年の桜が咲く」

主人公は、男娼のお照。
新劇の女形から身を崩し、上野に流れ着くまでの一年半の回想と、やがて上野の山で、姐御的存在になり、その行き末が描かれる。

もしや当事者だったのではないかと思えるほどの、詳細な描写から、リアルな実態がまざまざと浮かび上がってくる。

「商売の呼名もオンナガタと一定した。芝居のおやまと云う言葉は侮辱的なオカマと紛れ易いからだ。仲間の事も、初めは出鱈目に――お姉さん、オネエ、一件仲間、毛知り、おかまやさん、ゴレンサン等――と呼びあっていたが、『御連さん』と定めた」

「御連さん」、今で言う「組合員」である。

彼女らがときに集う鐘山亭という腰掛茶屋は、今も実在する明治8年創業の韻松亭のことだろう。

お照が、レズビアンの男役である娼婦の二河原と同衾し、奇妙な夫婦の関係になっていく後半の展開は、やや強引過ぎるものの、二人の描写には、昭和のエロ・グロ的嗜好が垣間見える。

「お照の女性化した肉肥りな男体と、二河原の牡牛のような男性的で伸暢な四肢との組合せの位置が変るたびに、愛欲心理は苦悶してすすりないた」

角達也は、1918年5月23日、東京生まれ。作家・詩人の菊岡久利に師事し、本作が処女作らしい。同時期、中央公論に『どん底の性欲』という、やはり上野の山のルポを発表しているが、その後の創作の足跡はぷつりと途絶えている。

あとがきで、角の今後の活躍を期待すると記した菊岡との出会いも、3年あまり上野地下道生活をしていた時だったらしい。
男娼でなかったとしても、当時の上野の山は、角にとって庭のような場所だったことは間違いない。

本作、オリジナルはおそらく国会図書館でなければ手にすることは難しいだろうが、『同性愛言説・性教育からみるセクシュアリティ』という研究者向けの専門書シリーズに収録されており、最寄りの図書館に見つかった。

他に収録されているのは、1931年に発売され発禁処分になった流山龍之助著『エロ・グロ男娼日記』と、1958年発行の富田英三著『ゲイ』で、両方とも面白い。エッセイ集である『ゲイ』には、当時のゲイシーンが描かれ、ゲイボーイのケニーらも登場する。

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