想元紳市ブログ

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『彼岸花』

小津安二郎の映画は、ある程度歳を重ねてから観ると、格別味わい深いようである。

1958年公開の『彼岸花』は、小津初のカラー作品。 
戦後のいわゆる「小津調」の中で、『東京物語』は別格としても、とても好きな一作だ。

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ローアングルのカメラワークでとらえた、唐紙やカーテン、テーブルクロス、座布団の柄まで、画面すべてに行き届いた小津のセンスは、この作品でひとつの完成形を見る。
湯呑みや花瓶など小道具も、すべて一級品や骨董を使用。
必ず画面のどこかに赤い色を配置した仕掛けも、カラー映画ならではの醍醐味である。

物語のテーマはいつも通り単純で、ありふれた父と娘の関係だ。
娘の恋愛結婚に、うろたえる父親の姿。
他人の娘の恋愛には寛容で、心の広い理解者でありながら、わが子となると話は別である。

父親を演じたのが佐分利信、娘は有馬稲子、妻は田中絹代、婚約者に佐田啓二。
佐分利の親父仲間、飲み屋の女将など、いつもの面子がそろう。

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本作で、自分が何より好きなのは、京都で旅館を営む母娘である。
主人公平山家と家族ぐるみのつきあいをし、一家を訪ねては早口でしゃべりまくる。もっぱら、娘の婿探しが母の生きがいだ。
母親は、関西女を演じさせたら右に出る者はいない、浪花千栄子。
娘は、大映から特別出演している山本富士子。

平山家を訪ねた浪速が、お茶を出してくれたお手伝いに手土産を渡す。
「あんたやおへんで、おうちへどっせ」と念を押したのには、大爆笑。

陽気で、したたかで、小粋な京女二人が、いつもの小津の色調に、特別コミカルで明るい花を添える。
また、山本がとっかえひっかえ着る着物の美しさも必見だ。
 
この二人、単に色物に留まらず、実は本作のテーマを語る伏線的存在でもある。

終盤、山本が佐分利に笑って告白する。

「お母ちゃん、口先だけでそんなこと言うて楽しんでますけど、ほんまはうちを手放しとうないんどす」

このシーンでの、山本富士子のコケティシュな美しさといったらどうだろう。

そして、改めて思うのは、佐分利信という役者の色気である。
小津の映画は、性の匂いが極力排除されていると思うのだが、そんな中にあって、佐分利は、存在感だけでむんむんする男の魅力を放つ、異色のキャストだと言える。


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