想元紳市ブログ

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勝目梓『小説家』

バイオレンス・官能小説の大家、勝目梓が70歳を越えて初めて発表した自伝的小説である。
生い立ちに始まり、通俗小説の流行作家として成功するまで。
主人公に「彼」と三人称を用いたことで、単に過去を振り返るというだけでなく、少し距離を置いた場所から自らを冷静に、客観的に見つめ直そうという強い意志が際立つ。

柱は二本ある。
ひとつは、奔放な女性関係。
妻と幼い娘を熊本に残し、愛人と事実上の駆け落ち。やがて糟糠のその愛人も捨て、東京で出会った新たな女性と再婚、娘を二人もうけてのち、再び離婚。
その経緯を、赤裸々に告白する。

もう一つは彼の文学的軌跡。
とりわけ、愛人と上京してから、さまざまな仕事をしながら小説家として一本立ちしようと励む若き日々は読み応えがあった。
二人の大作家、中上健次と森敦との出会い。
彼らの圧倒的な才能に直面して挫折し、純文学を捨てるに至る苦悩。その後、娯楽小説家に転身する葛藤を、彼は振り返って、否定的には捉えていない。

「娘たちがこうむるであろう肩身の狭い思いや恥ずかしさに対しては、彼は理解を持ちながらも、妥協して自分の考えを曲げる心算はないのだった。彼は娘たちの体面を保つために、本名を伏せてペンネームを用いようなどとは、一度も思わなかった」

明治や昭和の文豪にたびたび見られる破滅的な生き方は、まさに生来の小説家としか言いようがない。

「彼は何かをぶち壊したくなっていたのだ。壊すべきものもはっきりとわかっていた。まず、小説を書いていく上での足枷と思える家族との関わりから逃げ出したかった。(中略)
 そうすることが、ブンガクに立ち向かう自分の精神を強靭なものに鍛え上げてくれるのであるし、苦悩こそが自分のブンガクを深化させるドリルのようなものになるはずだ」

人間の情念をえぐりたいという彼の作家的指針は、ジャンルが変わろうと決して失われることがなかった。

続編にあたる『老醜の記』という自伝小説もある。
主人公、還暦から73歳まで。娘よりも若い一人の女性との恋愛が描かれる。
その銀座のホステスとの関係は、小説の終わりでもまだ継続していて、その後どうなったのか、知りたくてたまらなくなる。

 


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