想元紳市ブログ

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福島次郎『淫月』

三島由紀夫との関係を赤裸々に綴り、遺族からの提訴で発禁となった『剣と寒紅』がおそらく最も有名な福島次郎の短編集。
全八編、全て著者の故郷、熊本を舞台にしたゲイの物語である。

共通したテーマは、オカルト。

男同士の愛憎が、化け物や不可思議な現象となって、おどろおどろしい結末に至る。
とはいえ、いわゆるホラー小説の類ではない。
熊本のゲイバーが頻繁に舞台として登場し、地元のゲイがあれこれ饒舌に会話する中で展開する様はコミカルですらある。

表題作『淫月』の主人公は高名な画家。
ノンケの農家や教師の親父たちを言葉巧みに誘い、ヌードモデルとしてスケッチするシーンは、純文学的な格調を伴いつつも、官能小説ばりに淫靡だ。

どの短編にも多かれ少なかれ福島本人の影が見え隠れするところが、おそらく短所でもあり長所でもあろう。

中でも最後の『飛魂抄』だけが、色合いを異にする。
ほぼノンフィクションだと思われる。

熊本在住の作家の元に、若い頃関係のあった大作家Yが東京から執筆の調査のため訪ねてくる。
とくれば、Yが誰なのかは言うまでもない。
五日間の滞在中のYの様子や男絡みのエピソードは、正直生々しいほどだ。
場末のゲイバーに集った年寄のオカマ三人が昔を回想するという展開で物語は進むが、最後にママがこう言って締めくくる。

「日本刀で割腹し、その上、自分の首をはねさせた人なんでしょう。いまの時代、そんなことが出来る人、そこまでしようとする人なんかいないもの。それほどの念力の激しい人だもの……やはり、生霊だって、九州までとんでくると思うのね、わたしは」

この言葉が示唆する通り、本作にも同じく、Yの生霊に関係するオカルト的なオチが付く。


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