想元紳市ブログ

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『ブルージャスミン』

ケイト・ブランシェットがあらゆる主演女優賞を総なめした『ブルージャスミン』。

テネシー・ウィリアムズの『欲望のいう名の電車』を現代のサンフランシスコに置き換えた、ウディ・アレン版だ。

ニューヨークから妹のジンジャーを頼ってサンフランシスコにやってきたジャスミン。
夫が詐欺師だったことが判明し、裕福なセレブの生活が一転。自己破産して何もかも失い、ほとんどホームレス同然となった。
というのに、飛行機はファーストクラス、シャネルのジャケットとヴィトンのラゲージというのも異常だが、そんなことより、かなり精神を病んでいる。酒と抗鬱剤が手放せない。

里子同士で血のつながらない妹は、野蛮で単細胞の男と婚約中で、ジャスミンはそんな彼らを負け組と罵り、ことごとく軋轢を起こす。
パーティーで出会った外交官の男には嘘をついて婚約まで至るも直前にバレて破談。
そうすると、いよいよジャスミンの精神は異常をきたす。

ニューヨークでの華やかな過去と、サンフランシスコでの狂った現在を交互に描いて物語は進むが、その両極端を見事に演じきったケイト・ブランシェットはさすが文句のつけようがない。

虚言とまやかし、堕落に彩られたジャスミンだが、観ていてなぜか全く嫌いになれないのは、ケイトの人間味露わな熱演と同時に、ウディ・アレンの注ぐ温かい眼差しゆえである。

自らが作り出した虚飾と精神衰弱で疲れ切ったジャスミンは、ある意味、ウディ・アレンの分身だとも言えないだろうか。
それだけでなく、欠点だらけで、時に救いようのない選択をしてしまう、不器用な現代人を象徴しているとも見え、ジャスミンはそんな我々を代表して、見事なまでに堕ちていくのである。

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『ブルージャスミン』のブルーは『ブルームーン』というスタンダードナンバーから。
ジャスミンは、ことあるごとに夫と出会ったときに流れていた曲が『ブルームーン』だったという話を周囲に吹聴する。
それは、おそらくジャスミンが最も幸せだった瞬間であり、もはや決して取り戻すことのできない過去であるからこそ愛おしく、ひたすら崩壊し狂っていく人生の中で、それだけが唯一、心のうちに宝石のように輝いて残っていくのだろう。

『欲望という名の電車』では、最後、精神病院に連れられていくブランチを、それでも我々は愛するように、このジャスミンも、全く同じ意味で愛さずにはいられないのである。




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