想元紳市ブログ

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白石一文『私という運命について』

大企業の総合職として働く冬木亜紀の29歳から40歳までの10年間を描いた長編である。

この年代の女性にとって切実なテーマである恋愛、結婚、仕事、出産……。
それぞれをどのように考え、受け止め、乗り越えていくか。
恋人・康との関係を柱に、背景にはこの作家らしく、「運命」という言葉に象徴されるスピリチュアルな精神が滔々と流れている。

29歳の時、亜紀は康からのプロポーズを断る。
すると一度会っただけの康の母、佐智子から「あなたはどうして間違ってしまったのですか?」という真摯な手紙が届くのだ。

「選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです。未来など何一つ決まってはいません。しかし、だからこそ、私たち女性にとって一つ一つの選択が運命なのです」

亜紀が、佐智子の言葉の意味を真に理解するのは、何年も後のことである。

十年の物語は四章から構成され、各章、違う人物の書いた手紙が、繰り返し同じテーマを語る。
佐智子からの手紙、義妹の手紙、女友達の手紙、康の手紙……。
手紙だけではない。亜紀と関わる人々が、なぜか神の啓示のように、同じテーマを繰り返すのだ。

「人は、決定し、選択することでしか生きられないし、そこに初めて自分という人間のフォルムが生まれる」

「人と人とのあいだには、きっと取り返しのつかないことばかり起きるけれど、それを取り返そうとするのは無理なのだから、取り返そうなんてしない方がいいんだと私は思います。大切なのは、その悲しい出来事を乗り越えて、そんな出来事なんかよりもっともっと大きな運命みたいなものを受け入れることなんだと思います」

「人間は、愛する人の人生に寄り添うことはできても、その人のいのちに介入することはできないのです」

「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものになる」

長い年月をかけて、やっと自分の心で理解し、受け止めることができた亜紀に、ラスト、運命から素晴らしいギフトが届く。
その鮮烈なまでの感動に、思わず涙した。



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