想元紳市ブログ

2017年07月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年09月
TOP映画 ≫ 『西鶴一代女』

『西鶴一代女』

見逃していた溝口健二監督の代表作の一つ『西鶴一代女』をやっと鑑賞。

文字通り、江戸時代前期に書かれた井原西鶴の『好色一代女』が原作である。

男と権力に弄ばれて、天国と地獄の間を何度も行き来するような、破天の人生を歩む女、お春。
御所勤めの女官という名誉ある華やかな娘時代から、街娼に堕ちた老年まで、田中絹代が凛として演じきった。

複数の男たちに翻弄されるお春。
美し過ぎることが男を惑わすという設定から、今風に言うと「魔性の女」「男好きする女」といったイメージを持ちかねないが、明らかに違う。
時は封建時代、女であるお春に選択の余地はなく、ただ男と権力の言いなりになるしか生きられない時代なのだ。

その凛々しさは、ひたすら自分の運命を受け入れ、それでも顔を上げて生き続けていく強さから立ちのぼってくるものである。

田中絹代という、文句なしの大女優でありながら、絶世の美女というよりは、むしろ庶民的な容姿をもった女優をキャスティングしたことが、結果として主人公に厚みを付与したと思う。

saikaku_convert_20160121223557.jpg

物語は、今や老いた街娼と堕ちたお春が、たまたま迷いこんだお寺で五百羅漢を眺めているうちに、過去関わった男たちを思い出していくという展開で始まる。
終盤またそこに戻ってラストへと続くのだが、ここでの田中絹代の気迫湛えた表情、思わず崩れ落ちるときの手足の動きなど必見。

溝口といえば、長回しのカメラワーク、妥協のない美学に裏付けられたセットや台詞など、この映画では全てがうまく噛み合い、眩いばかりに素晴らしい。
当時の日本映画の持っていた豊穣さが、隅々にまで行きわたった上質さにもため息が出る。

特に二条城で撮影された、成長し殿様となったわが子の後をお春がひたすら追い続けるシーンは美しく、感動的だ。

ラスト、托鉢をしながら巡礼に旅立つお春の姿からは、神々しささえ感じられた。

 
スポンサーサイト

Comment


Comment Form













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL