想元紳市ブログ

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『8月の家族たち』

重く入り組んだ家族の姿を描いた舞台劇の映画化である。
正直言って、ここまで救われない、後味の悪い物語もなかなかないと思うが、何やらずしりと心に響くものがあるのは、確かだ。

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オクラホマ州の片田舎。
突然父が失踪したことを受けて、三姉妹がそれぞれの夫や恋人を伴い、母の住む一軒家に集う。

物語の背景に一貫して流れるテーマは、母自身が言う「女は老いるにつれ、どんどん醜くなっていく」ということだ。

病を患っているだけでなく、薬物依存症で頻繁に正気を失い、支離滅裂な毒舌を吐きまくる母バイオレット。
夫の浮気で別居中の長女バーバラ。
一人両親の世話をしてきた地味な次女アイヴィーは、密かにいとこと恋愛中。
バツ3のどうしようもない男と婚約中の少々いかれた三女カレン。
近所に住む叔父夫婦とその一人息子。
長女バーバラの夫と反抗期の娘。

登場する家族は以上である。

演じるのは、母メリル・ストリープ、長女ジュリア・ロバーツを柱に、サム・シェパード、クリス・クーパー、ジュリエット・ルイス、ユアン・マクレガー他、全員が名優、演技派ぞろいのオールスターキャスト。

そんな彼らが、一癖も二癖もある、例外なく深い闇と秘密を抱えた大人たちを演じて対峙する応酬は、やはり圧巻の見応えだ。
さすがこれだけのキャスト、それぞれの役にきちんと見せ場が用意してある。

文句なしに素晴らしかったのがジュリア・ロバーツ。
メリル・ストリープはさすが強烈な存在感だが、正直、最近の彼女につきまとう、あざとさが鼻につく。
叔母を演じた名バイプレーヤーのマーゴ・マーティンデイルが、実に味わい深く、本作のキャスト上もストーリー上もカギを握る女であることは終盤判明する。

物語が進むにつれ、様々な秘密が明かされ、それなりの和解へと収束していくのかと思いきや、全くそうはならない。
各々の苦悩が炙り出されて、バラバラに放り出されたまま、唐突に終わってしまうのである。

一人荒野に佇む長女バーバラの顔に、かすかな解放感が見てとれなくもないが、観客に心地よさをもたらすほどのものでもない。

それよりも、もしかして仄かな温かさを感じさせる人物がいるとしたら、たった一人家族以外の登場人物、家政婦の女。
ネイティブ・アメリカンで、必要なこと以外話さず、ただ控えめに裏側からじっと家族を観察しているのが彼女である。

自分は成瀬巳喜男の『流れる』で田中絹代が演じた女中をふいに思い出した。

結局、人の人生は全く思い通りにはならず、汚いものや痛みをそのまま抱えて生きていくほかないのでは……。
そんなことを思いながらエンドロールを追った。

 


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