想元紳市ブログ

2017年09月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2017年11月
TOP映画 ≫ 『クロワッサンで朝食を』

『クロワッサンで朝食を』

80歳を超えたジャンヌ・モローが、大女優の貫禄で魅せたフランス映画『クロワッサンで朝食を』。

主な登場人物は三人。

パリに暮らすエストニア出身の富豪の老婦人、フリーダ。
家政婦として雇われてきたエストニア人の中年女性、アンヌ。
雇ったのは、フリーダの歳の離れた元愛人、ステファン。

フリーダは随分昔に夫に先立たれてから、ステファンはじめ幾つかの奔放な恋の遍歴を重ねてきたが、今は孤独で引きこもりの生活。辛辣で意地悪で、仲間もおらず、家政婦の成り手もいない。

アンヌは介護してきたアルツハイマーの母が亡くなったばかり。12年前に離婚した夫は未だに酒浸りのろくでなし、二人の子供もすでに自立して冷たい。

そんな二人が、次第に心を寄せ合っていくプロセスが、物語の柱だ。

179421_1280x720_qtsVcV_2_ch-fr_1_11797_24952_179421_769_convert_20160121220946.jpg

テーマは人生の終盤に直面、あるいは差し掛かりつつある、大人の孤独。

老いや家族の喪失など具体的なわかりやすい孤独というよりも、長い間生きてきた中で、知らず知らずのうちに蓄積した、行き場のない深い孤独である。

フリーダとアンヌが互いを理解し合うようになるのは、言葉にしない心のうちのそんな孤独に共感し合うからだ。

そもそも、物語の説明描写は大胆なまでに削除されている。

アンヌとステファンに関係するある決定的な描写すら、すっぽり省略されている。
フリーダが、二人の極めて些細な変化からそのことに気づくように、観客にも同じ成熟さが求められる映画なのだ。

「男は変わらないのに、なぜ女は変わるのか?」とフリーダがステファンに尋ねる。

「女は飽きやすく、男は忠実だからだ」

「悪くない答えね」とフリーダは納得するが、成熟さを尊ぶフランスならではの大人の会話が小気味よい。

第三者のステファンも、どこか一筋縄ではいかない孤独を感じさせる。

かつてフリーダの歳の離れた若き愛人だったといえ、自身も今や中年で未だ独身。
どうやら特定の長く続く関係を築けないでいるようだ。
フリーダから持たせてもらったカフェのオーナーで、つまりツバメにも近い関係だったことが推測されるが、今は老いた意地悪なフリーダがお荷物だと考えていて、そう思う自分に苦しんでいる。

その意味で、ステファンもまた孤独な大人の同類だ。

ジャンヌ・モローはシャネルを粋に着こなしつつ、顔はしわだらけで体型ももはや見るに堪えない。老醜を曝け出しているが、それでも人間としての魅力が美しい。
老婦人をこんな風に描け、しかも大女優が堂々と演じるところなど、さすがフランス映画である。

f0165567_5565651_convert_20160121220802.jpg

 
スポンサーサイト

Comment


Comment Form













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL