想元紳市ブログ

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『ミラノ、愛に生きる』

息子の親友との不倫に走る大富豪マダムを描いたイタリア映画。

ラグジュアリーブランドが製作に関与しているだけあって、映像や音楽は洗練を極めている。
また、ミラノという都市の持つ独特の冷たさや寂寥感が見事に表現されており、それだけでも鑑賞に値する。

主人公のエンマは、繊維で財をなしたミラノの大富豪レッキ家の御曹司に見初められ、嫁いできたロシア人女性。
今や成人した三人の子を持ち、夫との関係も悪くない。
すっかり上流階級の生活に溶け込んでいるように見える。
大邸宅で開かれる豪華な食事シーンは、さながらヴィスコンティの世界だ。

しかし、このレッキ家、よくよく観察すると実に様々な不協和音があちらこちらから聞こえてくる。

最初の食事のシーンで、義父から経営をエンマの夫と長男に譲ることが発表されるのだが、なぜか、義父の死後数ヶ月で、会社はグローバル資本に売却される。

母親似の長男と父親似の次男の間に何らかの確執があること。

明らかにマザコンの長男は、心優しいが精神的にひ弱な理想主義者で、そのことを父や弟から疎まれていること。

ロンドンに留学している長女はレズビアンであり、知るのは家族のごく一部。

典型的なミラノマダムである義母が時折見せる冷ややかな眼差し。

当のエンマ自身も、一筋縄では語れそうもない何やら底知れぬ闇を抱えている。
ミラノに来てから一度もロシアに帰っていないというのも、深い事情がありそうだ。
さらにエンマという名も夫がつけた名前で、本当のロシア名は最後まで明かされないまま。

エンマが幸せだったのか、不幸だったのか、その辺りははっきり描かれるわけではない。
だが、単に閉鎖的な上流階級の生活から欲求不満と孤独を抱えていた女、とだけ決めつけるのは表面的過ぎる気がする。

家族の中ではレズビアンの娘だけが唯一、自己を解放する存在。
兄から「幸せそうだね」と言われてこう答える。

「幸せという言葉は誰かを不幸にするわ」

「幸せ」と「不幸」は、一瞬にして入れ替わるカードの表と裏であることを娘は知っているのだ。

エンマの不倫は、その常として、ある悲劇をもたらす。

ついにエンマが家を出るラストシーンが素晴らしい。
呆然と立ちすくむ家族の面々、しかし、その表情には何やら複雑な裏の思いが見え隠れする。

さらに、長らく家族に仕えてきたメイドの一人が、ここで驚くべき行動をみせる。
今までただ従順に仕えてきたようで、実はエンマの本質をしっかり見抜いていたことが明らかになる。

エンマを演じたティルダ・スウィントンの圧倒的存在感。
衣装は、全てラフ・シモンズのデザインしたジル・サンダーで、ジュエリーはダミアーニ。
さすが、ファッション界でもアイコン的存在らしく、完璧な着こなしに息をのむ。

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また、義母を演じた懐かしいマリサ・ベレンスンのミラノ・マダムぶりも見ものである。

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