想元紳市ブログ

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『ハッシュパピー バスタブ島の少女』

無名の監督が、低予算で、しかも素人の少女を主人公に抜擢し作った映画が、いきなりアカデミー賞ノミネートの快挙。

『ハッシュパピー バスタブ島の少女』は、現実と妄想が美しく融合したファンタジー映画だ。
描かれるのは自然と人間の共存、生命の逞しさなど壮大なパワーに満ち溢れている。

舞台はアメリカ南部の河川敷に広がる低地帯。
貧しいながら、自然をそのまま受け入れ、コミュニティーを形成し暮らしている人々。
6歳の少女の名はハッシュパピー。
母はどうやら失踪し、父と二人でトタン家に住んでいる。

学校の教師が教えるのは、文字や計算ではなく、人間は自然のちっぽけな一部に過ぎないということ。

「動物はみな肉で出来ています。私も肉、あんたたちのお尻も肉。世界というバイキング会場の料理にすぎないの」

余命わずかの父が不器用に教えるのは、そんな自然の中でいかに一人、強く生きていくかということだけだ。

ハッシュパピーの妄想に現れる、太古に絶滅した尖った角の野獣は、自然の大いなる力や脅威そのものの化身だろうか。

ある日、村は巨大なハリケーンに襲われて水没、壊滅状態に。
役所によって強制的に避難所に退去させられる。
ハッシュパピーは、清潔で真っ白な避難所を「水のない水槽のようなもの」だと思う。
やがて彼らは、施設が嫌で逃亡を企てる。

過酷な現実の中で、少女の魂は旅を続け、一歩ずつ踏みしめながら成長していく。
そして、恐れていた野獣が、実は自分の内にあるものだと気づいたとき、大きな力を獲得するのである。

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死んだ父を葬送するハッシュパピー。
人間の死とは、彼らにとって「川のほとりに立ち、船を見送るようなもの。見えなくなっても消えてなくなるわけではない」ということ。

ラスト、ハッシュパピーを先頭に、今にも水没しそうな道を行進する人々の姿は、自然の一部にすぎない人間の、だからこそ尊い人間賛美に溢れている。


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