想元紳市ブログ

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『ブロードウェイと銃弾』

1995年公開、ウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』は、禁酒法の嵐が吹き荒れる1920年代のブロードウェイが舞台。

売れない劇作家デヴィッドの戯曲がついに舞台化決定。
しかし、スポンサーはマフィアのボス。キャバレーのお馬鹿な踊り子である愛人にせがまれて、役を与えることだけが目的だった。

芝居の主要キャストは、愛人オリーブ含めて4人。
大女優だがもはや過去の人、未だ虚栄心だけは過剰なヘレン。
いつも犬連れで奇妙な言動が痛いイギリス人女優のイーデン。
名のある役者だが、過食症が原因で体重のコントロールができないワーナー。

みな曲者ばかりで、稽古の初日から大荒れ。それぞれが言いたい放題で、台本はズタズタに。
マフィアのボスがオリーブの見張り役に付けた用心棒のチーチまでもが、リハーサルを観て馬鹿にしたように嘲笑う。

「『人間の心は迷路』だと? 氷で凍らせても鼻が曲がるようなくさいセリフだな」

実はこのチーチ、デヴィッド以上に劇作の才能溢れる男だったことから、物語はおかしな方向に転がっていく。

劇作家をジョン・キューザック、オリーブをジェニファー・ティリー、ヘレンをダイアン・ウィースト、ワーナーをジム・ブロードベント、イーデンをトレシー・ウルマンと、癖のある役者による怪演合戦が見どころだ。

彼らはみな相当にエキセントリックだが、もしかして現実のブロードウェイも、実はそんな裏方や役者で成立しているのかもしれない、と思わせる妙なリアリティがある。
おそらく、ウディ・アレンの実体験が相当盛り込まれているはずで、そう思うと、映画全体が痛烈な皮肉に見えてくる。

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ダイアン・ウィーストは、本作で見事アカデミー最優秀助演女優賞を受賞。
それも納得の、痛すぎる、しかしどこか可愛げのある大女優っぷりは、この映画の華である。

ヘレンは、どこまでが演技でどこまでが素なのか、掴みどころない浮世離れした女なのだが、それでいてときおり、意外にシリアスな、さりげない箴言をポツリと吐くのである。

「言葉に何の意味があるというの? 人間にとって本当に大切なものは、言葉になんかならないのよ」

ハチャメチャな人々との不要な摩擦、一冊の台本をめぐるドタバタをなんとか乗り越えて、最後にデヴィッドが気づくのは、偽らざる恋人への愛であった、というオチがつくのは、いかにもウディ・アレンらしい。

彼の最近の作品はヨーロッパを舞台にしたものが続いている。
どれもそこそこ面白いのだが、やはり自分はマンハッタンを舞台にした一連の作品群が好きだ。
『アニーホール』『マンハッタン』『ハンナとその姉妹』『夫たち、妻たち』など。

『ブロードウェイと銃弾』はこれら作品を生みだしたウディ・アレン黄金期の、おそらく最後の方に位置する作品で、これ以降、いっとき私生活におけるスキャンダルもあって、しばらくの混迷期に入っていった気がする。

 

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