想元紳市ブログ

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『鬼女』

数年ぶりのドラマ出演になるという、藤山直美を主役に向かえたスペシャルドラマ『鬼女』。
今や観るに堪えない出来の二時間ドラマばかりだが、さすがに見応えがあった。

鬼と呼ばれた結婚詐欺師の女、三崎真由美。
複数の男から大金を騙し取り、二人を殺害した容疑で逮捕されるのだが、本人は一貫して殺人を否認し、真相は闇の中。
とくれば、誰もが記憶に新しい、世間を賑わせた実在のあの事件がモデルである。

留置場で、被告の真由美と、フリーライターの女が面会する冒頭のシーンがいい。

「騙した男なんか一人もいてません。私はただ、あの人らに愛されてしもうただけや」

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実際の事件と同じく、なぜたいして美しくもなく、デブの平凡な中年女に、何人もの男たちがすんなりと騙されたのか。
疑問を抱えたまま、真由美という女の奇怪な魅力と闇が、次第に解明されていく。

文句なしの藤山直美を中心に、藤山と共演できるならと出演を快諾した女優たちが、競うように熱演を見せる。
フリーライターを夏川結衣、検事を田中美佐子。
そして、被害者の男の娘を演じた小池栄子、真由美のやさぐれた旧友を演じたキムラ緑子も、強烈な印象を残した。

特に法廷で証言に立った小池の演技。
真由美の言い草に激怒し、「ブス!ブス!」と絶叫して暴れるシーンは凄まじいまでの迫力だ。

真由美と対決する女検事は、ドラマのもう一人の主人公である。
浮気の疑いがある夫との関係は最悪、かたや検事の仕事も行き詰っていて、今回の裁判はある意味崖っぷち。そんな満たされない生活が、真由美によって、逆に露わに晒されるのである。

一人の女として果たしてどちらの方が幸せなのか、二人の立場が逆転していく心理劇が見事だ。

「私、今までたくさんの男性を幸せにしてきました。検事さんもご主人を幸せにしてあげてはりますか?ちゃんと夫婦生活してはりますか?」

「愛されない女は、ほんまに不憫や」

田中美佐子は、珍しく感情的な演技を見せるのだが、できれば『疑惑』の桃井かおりに対する岩下志麻ぐらいの貫禄とどす黒さが欲しかった。

さらに、ドラマのもう一つの見どころは、事件のスキャンダラスな報道の中で、わかりやすい善悪と美醜を追い求めるマスコミとそれに踊らされる大衆の浅はかさが、図らずも浮かび上がってくることである。

「あたしでもホンマのあたしのことわからへんのに、なんでみんな簡単にわかったって言うんでしょうねえ」

みんなとは、ドラマを観ている視聴者でもあり、そんな我々を真由美は嘲笑っているかのようである。


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