想元紳市ブログ

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『ビル・カニンガム&ニューヨーク』

New York Timesの人気ファッション写真家、ビル・カニンガムの実像に迫ったドキュメンタリー映画。

1929年生まれで、80歳を超えた今も現役。
パリの道路清掃員の青い作業用ジャケットがトレードマークだ。
お金儲けや食・住には関心がなく、つい最近までバス・トイレ共同のカーネギーホール上の狭いスタジオに住んでいた。
もちろんランウェイで有名ブランドの最新コレクションも撮影するが、なんといっても彼のライフワークは、50年間続けているという街角でのファッション・スナップである。
カメラ片手に、マンハッタン中を愛用の自転車で走り回る。

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前向きで明るく、ユーモアがあり、その人柄で誰からも好かれ、しかし、仕事では自己の美意識に拘り、一切の妥協をしない日常の断片をカメラは追っていく。

大御所デザイナーのコレクションであろうと、つまらないと思うものには一切レンズを向けることはない。
また、パパラッチが群がるような女優には知らんぷり。
ただで洋服をもらって着ているような有名人には興味がないからだという。

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自分の撮った一般人のファッション・スナップと、同じ洋服を着たモデルの写真を並べて比較された記事を出されて以来、WWD紙とは仕事をしないと決めた。
また、前衛的なDetail誌創刊当初の中心的スタッフを務めた際には、一切給与を受け取らなかった。

「お金をもらうことで、口出しをされたくなかった。自分にとって自由より価値のあるものは他にない」

ファッション関係者はもちろん、社交界のVIPなど、彼を知らない者はいない程の幅広い交友関係とは裏腹に、実は、誰も彼のプライベートの姿を知らなかった。

そんな彼に、監督が、個人的なことについて質問する非常に感動的なシーンがある。

「今まで恋愛をしたことがありますか?」

「一度もない。そんな暇は一切なかった。仕事が好きで心から楽しんできたから」

そして、本作の最大の見せ場が次である。

「日曜毎に必ず教会に足を運んでいるようですが」とさりげなく問われた瞬間、ビルの顔が、それまで見せたことのない沈痛な面持に豹変するのだ。

深く顔を伏せ、もしや涙すら浮かべているのかもしれない、十数秒の沈黙。

その後いつもの顔に戻り、「信仰は自分にとって大切なものです」とだけ答えるのだが、常に底抜けに明るく、前向きな彼の、決して人には見せないもうひとつの顔が炙り出された瞬間だ。

そこにどんな事情があるのか、語られることはない。
また、彼はおそらくゲイだと思われる。
だが、そういったことを抜きにしても、一人の人間としての生き方に、思わず称賛を覚えざるを得ない。

 
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