想元紳市ブログ

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『死ぬまでにしたい10のこと』

イザベル・コイシェ監督、ペドロ・アルモドバル製作、サラ・ポーリー主演『死ぬまでにしたい10のこと』。
同じ3人で作った『あなたになら言える秘密のこと』の前作にあたる作品だ。

ナイーブで繊細なモノローグ、声高に語られない裏事情、国際色豊かな音楽と抒情溢れるシーンなど、両作品において共通している。

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夫、娘二人と共にトレーラーハウスで暮らす23歳のアンが、突然、余命2ヶ月だと宣告される。
失意の中、一人夜中のカフェでノートに書き記すのが、死ぬまでにすべき10のこと。
余命のことは誰にも告げず、それらを実行することで残された時間を過ごそうと決意する。

主人公を取り巻く周囲の人々が印象的だ。

どうやら若い頃、かなり尖がった人生を歩んで来たらしい母は、今やすっかり生活に疲れている。
カウチに座り、好きなジョーン・クロフォードの映画を観ては涙を流す。

父は、刑務所で10年間服役中。

結婚式前日に婚約破棄されて以来、ダイエットのことしか頭にない職場の同僚。

不倫相手に選んだ男は、失恋を引きずり、女が持ち去って何もない家に新しい家具を買う気力すら持てないでいる。

それぞれに傷ついた彼らを演じるキャスティングが素晴らしい。
母をブロンディのデボラ・ハリー、不倫相手をマーク・ラファロ。
同僚を演じたクリストファー・プラマーの娘であるアマンダ・プラマーは、『フィッシャー・キング』を観て以来、大のお気に入り女優だ。

どうやら、映画の評価は賛否両論。
特に「夫以外の男性と恋愛をしてみること」というアンの行動の一つが、批判の的らしいが、自分は、むしろその点にこそ生身の人間らしさを見る。

死を前にしてさえ、人は誰もが菩薩のように生きられるわけではない。
自分勝手なエゴや、利己的な欲望を抱くことは、それほど他人から責められることだろうか。

刑務所を訪ねたアンに、父が言う。

「世の中には、相手が望むように生きられない人間もいる。努力してもできない。愛しても、幸せにできないのは辛いことだ。家族を愛しているが、家族が望むようには愛せないんだ」

どことなくゲイの生き方にも通じていて、心に沁みる。

人間の不器用な哀しみは、そのまま次作『あなたになら言える秘密のこと』に引き継がれていくテーマとなる。

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