想元紳市ブログ

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石原郁子『異才の人 木下惠介ー弱い男たちの美しさを中心にー』

本書は、日本映画を代表する木下惠介監督の作品の中に、同性愛者であった木下の本質を読み解いたものである。

とは言え、はっきりと木下はゲイだったという書き方は一切していない。
それは、本書の雑誌連載が始まった1995年には、木下がまだ存命中だったという事実が少なからず関係しているはずだ。

総論的な第一部、12の作品を詳細に分析した第二部とに分かれている。
第二部のまえがきで、著者はこう記す。

「当初ひとつひとつ孤立したせせらぎとして別個に見える要素が、本文の最後には、それらが互いに流れ込んでかたちづくる巨きな川となって、木下映画を貫いていることが、見えてくれば嬉しい」

「巨きな川」が何を意味するのかは、もはや言うまでもない。

木下映画に登場する男たちに共通する点として、過剰に女から女として迫られることを嫌悪すること、さらに母親を神聖化していることだと分析。
木下自身については、最初は随分回りくどい言い方をする。

「女性でも男性でもない(あるいはその双方であり得る)何かであり、とにかく当時の一般的な男性たちとまったく別の存在であった何かであると思える」

終章近くになり、映画『惜春鳥』が日本メジャー初のゲイ・フィルムだと評し、やっと、それなりに示唆するところまで辿り着く。

「ここには監督が男性同士に演じさせたかった肉体的接触が、かつてなく大胆に<常識>の枠に囚われることなく表現されており、その意味でも監督自身の<好み>を、さらにはっきり言えば<性向>を、堂々と主張した映画と言える」

ちなみに、本書を手にしたのは、著者の石原郁子に興味を持ったことがきっかけである。

彼女は、2002年に亡くなった映画評論家として有名だが、もう一つの顔がBL小説家だった。
伝説の雑誌『JUNE』の誌面で、中島梓の小説道場における有名門弟の一人。
そのずば抜けた純文学的な完成度で中島を唸らせたのが、彼女であった。


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