想元紳市ブログ

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沼田まほかる『痺れる』

彼女がその名を知らない鳥たち』を読んで以来、すっかり沼田まほかるの虜である。

『痺れる』は9編からなる彼女の唯一の短編集だ。
短編においても、人間のどす黒い闇に容赦なく切り込んでいく、独特のホラーサスペンス感は変わらない。
ホラーと言っても、人間そのもの、人間の心の怖さである。

『林檎曼荼羅』は、認知症を患った一人暮らしの「わたし」が、押入れを片付けながら過去を振り返る物語である。
結婚し別居している一人息子に関わる、12年前の事件の秘密が暴かれる。
その日、同居していた姑が忽然と姿を消し、それ以来消息が不明のままなのだ。

グロテスクなシーンが、独特の表現で描写されるが、それは現実なのか、あるいはボケた「わたし」の幻想なのか、はっきりと明示されないままに、読者はいつの間にか摩訶不思議な場所に連れて行かれる。

「繰り返し繰り返したどりなおした記憶は、磨きこまれたものの硬い光沢を帯びて、事実そのものよりもっと事実であるような何ものかに少しずつ変質していく」

『エトワール』の主人公は、不倫をしている37歳の女である。
男の妻に激しく嫉妬する物語は、散々描きつくされてきたテーマだが、沼田まほかるの手にかかると、一味違う。

「私にとって奈緒子と吉澤は、性を違えていながらまるで一卵性双生児のような存在だった。いつのまにか私は、一方で奈緒子に激しく嫉妬しながら、他方では奈緒子と吉澤の両方に恋をしているような、なんとも名状しがたい心を抱いているのだった」

最後に待ち受けている驚くべき結末。

読者の視線は、狂気に走る「わたし」から、一転、吉澤という相手の男の不気味さに持って行かれてしまう。


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