想元紳市ブログ

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『かぞくのくに』

25年ぶりに北朝鮮から一時帰国した兄を、両親と妹が迎える。
兄は、16歳のとき、帰国事業で一人移住したのだ。
病気の治療を理由に、今回、3カ月だけの特別な許可が出たのである。

家族4人で久しぶりに囲む食卓。
一見、母や妹ははしゃいでいるように見えるが、どこか微妙な空気が流れていて、ぎこちない。
兄は北朝鮮に妻と幼い息子を残しての帰国であり、家の外には同行してきた監視員が見張っている。
さらに、兄の移住の背景には、どうやら朝鮮総連系の仕事をしている父の思惑があったことなどもわかってくる。

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非常に重々しいテーマであるばかりか、画面も空気も終始どんより暗い。
それでも、ヤン・ヨンヒ監督の実体験に裏付けられた強いメッセージに、ぐいぐい引きこまれざるを得なかった。

それぞれが重荷を背負いつつも、あからさまに語ることのできない、家族4人の演技はみな素晴らしい。
監督の分身である妹を演じた安藤サクラの演技は、明らかに主演女優賞級の出来だ。

また、印象的だったのが、宮崎美子の演技である。
演じた母親像は、まるで在日のオモニそのものであり、正直、こんなにうまい女優だとは知らなかった。

兄は妹と買い物に出た先で、リモアのスーツケースが気に入る。
「これを持って、世界中を旅すればいいよ」と妹に買ってやろうとするのだが、値札を見て慌てて店を飛び出す。

この場面の意味が、ラストに繋がる。

突然北朝鮮からの指令で、滞在が打ち切られ、即刻の帰国命令が出る。
どんなに悲しもうと、兄も、家族もそれを受け入れるしかない。
兄を見送るときの、安藤サクラの演技が秀逸だ。

残された妹は、突然ベッドから飛び起き、家を飛び出す。
リモアのスーツケースを買うために。
買ったリモアを引いて、街の雑踏を歩く妹の姿。
それは、自由を奪われた兄に代わり、自由な世界で自由に生きてやろうという強い決意の現れであろう。

そうは思っても、エンドロールを迎える気持ちはやはり重い。
物語の舞台は1997年の設定だが、15年たった今も、あの国の状況はなんら変わっていないからである。

 
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