想元紳市ブログ

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『アバウト・シュミット』

ファミリー・ツリー』がなかなかの秀作だった、アレクサンダー・ペイン監督の2002年の作品が『アバウト・シュミット』。

両作品とも、仕事一辺倒だった中年男が、妻の死とその不貞の発覚に直面し、人生を見つめ直さざるを得なくなるという設定は全く同じである。

定年退職の最終日、荷造りの終わった殺風景なオフィスで、壁時計をじっと睨んでいる男、ウォーレン・シュミット。
秒針がきっかり5時を指すと同時に立ち上がり、オフィスを出て電気を消した瞬間から、彼の第二の人生がスタートする。

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ところが、すっかり生きがいを失くし、虚しさの中であり余る時間をどうやって過ごせばいいかわからない。
前向きでやたら明るい妻にも腹が立つし、離れて暮らす一人娘は胡散臭い男と結婚しようとしている。

そんな中、妻が急死。その上、昔、自分の友人と浮気までしていた事実が発覚する。
ウォーレンは、ショックと怒りのあまり茫然自失し、老後のため買ってあったトレーラーハウスを運転し、結婚を思い留まらせようと、娘のもとに走る。

ここからは、ロード・ムービーだ。
己の過去を確認したり、奇妙な人々との交流があったり、しかし、ウォーレンを変える事件らしい事件は何も起こらないまま、結局は嫌々娘の結婚式にも出席する流れに……。
心にもない感動のスピーチまでしてしまうのだが、もちろん、ウォーレンの心が晴れたわけではない。
それどころか、何もなしえなかった自分の人生の不毛と無力感に打ちのめされて一人帰宅する。

そこに届いた、一通の手紙。

実は、定年後の慰みにと、TVでたまたま見たアフリカの恵まれない少年の養父になるという制度に賛同し、毎月22ドルの小切手に手紙を添えて送ってきたのだが、その返事が初めてアフリカから届いたのだ。

仕事で成功し、お金儲けをする人生を否定するわけではないが、そこから零れ落ちてしまうものがある。
平凡な日常、寄り道や道草をすること、人とのなんでもない心の触れ合いの中に、キラリと光る喜びを見つける幸せ――。

それは、代表作『サイドウェイ』などにも共通する、ペイン監督の一貫したテーマである。

彼の映画の登場人物は、どんな端役であっても、どこか奇妙でバランスが悪い。
完璧な人格や王道の人生から外れてしまった人々に対する、監督の愛情が見て取れる。

本作においても、結婚式で、ただ讃美歌を歌うだけの女性ですら、なぜか笑ってしまうほどおかしい。

キャシー・ベイツ演じた、醜悪な体をさらす、娘婿のエキセントリックな母しかり。

もちろん、ウォーレンを演じたジャック・ニコルソンは、文句なくチャーミングでうまいのだが、ただ、いつものアクの強さが本作を彼の映画にしてしまったことは否めない。

 
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