想元紳市ブログ

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『居心地の悪い部屋』

本書の編訳者、岸本佐知子曰く「読み終わったあと見知らぬ場所に放り出されて途方に暮れるような、なんだか落ちつかない、居心地の悪い気分にさせられるような、そんな小説」12編を集めたアンソロジー。

昨年読んで気に入った、ミランダ・ジュライ著『いちばんここに似合う人』、リディア・デイヴィス著『話の終わり』がともに岸本佐知子の翻訳だったこともあり、本書を手にとった。

とりわけ気に入った短編は、アンナ・カヴァン著『あざ』。

14歳のころ、寄宿学校で出会った憧れの女生徒H。
一方的に羨望のまなざしで見つめていただけで、会話らしい会話は一度だけ。

「あなたもこれと同じものを見たことがある?」と、Hが見せてくれたのは、二の腕にある精緻な円形の紋章のようなあざだった。

それから長い年月が過ぎ、旅先の外国で、博物館として使われている中世の城を訪ねた「わたし」は、陳列奥の鉄格子の向こうの部屋に異様なHの姿を見る。

「あの地下牢はとても暗かった。いまのわたしには、あれが何かの間違いであったことを祈ることしかできない」

解説によると、40年以上前に亡くなっている著者のカヴァンは、裕福な家庭に生まれるも、鬱病と精神的不安定、ヘロイン中毒に苦しみながら作品を発表した異質の作家だったらしい。

レイ・ヴクサヴィッチ著『ささやき』では、女が出ていき、一人残された部屋で、男は奇妙な出来事に翻弄される。

「あやまちが犯され、関係が壊れ、互いを傷つけあう言葉が交わされる。それが人生だ」

女と、その新しい男に対する妄執にとりつかれた男の混乱は、誰にとっても、他人事ではない。

読後、居心地が悪いのは、普段自分が覆い隠したり、見ないふりをしている黒い感情、自分とは無関係だと思い込んでいる一面が呼び起され、揺さぶられるからである。


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