想元紳市ブログ

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『恋の罪』

園子温監督の映画は、どうやら自分と肌が合うようだ。

と言っても、彼の感性や美意識という点では、センスを疑いたくなることも多々ある。本作に関して言うと、音楽の趣味だ。
それらを差し置いても、『恋の罪』が、安易な想像をあっさり裏切る、悪趣味ギリギリの、圧倒的な腕力によって紡ぎだされた映画であることは否定しょうがない。

物語は、実際の事件がモチーフになっている。

15年前に起きた、有名な東電OL殺人事件である。
渋谷区円山町のラブホテル街で夜な夜な立ちんぼし、売春をしていて惨殺された女は、なんと東電のエリート社員だった。
人が内に抱えた闇の暗さに、これほど容赦ない光を当てた女の事件は他に見当たらない。

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映画の主役になるのは3人の女だ。

事件さながら、昼間は有名大学助教授、夜は娼婦と化す女、美津子。
異常に潔癖な人気作家と結婚した主婦いずみも満たされない思いから、やがて円山町に辿り着く。
そして、優しい夫と子供がいながら愛人と情事を重ねる刑事、和子。

もう一人美津子の異常な母親も加えれば4人の女が、物語の全てである。
男たちはというと、みな揃って上澄み液のように希薄で、無責任で薄汚い。言ってみれば、「ごみ」のような存在ばかりだ。

受け身で夫の言うがままだったいずみは、流されるように堕ちていくのだが、それは、抑圧された自我の解放を伴う快感すら伴っていることに気付いてしまう。

美津子が、いずみに言う言葉。

「あのね、影がある人ねって言われる頃はまだ間に合うのよ。闇は影よりも濃いから。この辺りも闇が濃いから来ない方がいいよ。早く帰って」

劇中、一つの例え話が出てくる。

一人の主婦が生ごみを持って、ごみ回収車を追いかける。
間に合いそうになると行ってしまう、というのを繰り返しているうちに、どんどん遠くに来て、いつの間にか見ず知らずの町に辿り着いてしまっていることに気付く――。

思えば、人の一生とは、多かれ少なかれ、そんなものかもしれないと思う。
自分の意志通りに、一歩一歩確認しながら歩んでいる幸運な人はごくわずかで、多くの人は、必要に迫られ、追い立てられて進んだ先で、初めて見る風景に驚く、そんな生活。
それは、今まで知らなかった、自分の別の顔でもある。

映画のエンディングも、和子のそんな姿で終わる。
辿り着いた場所で、立ちすくむ和子が着ているのは、被害者の女が着ていたのと同じ赤い服だ。

美津子の教え。

「愛する人とのセックス以外は、金を介在させなきゃ駄目」

闇の向こうに見えるのは、捨てても捨てきれない、どうしようもない愛の姿である。


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