想元紳市ブログ

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『ヒミズ』

園子温監督の最新作『ヒミズ』。

冷たい熱帯魚』同様、作り手の圧倒的なパワーに満ちた映画である。

酒浸りでたまに帰ってきては暴力をふるう父親、母親は愛人と蒸発し、池のほとりの貸しボート屋に一人残された少年、住田。
拒否されながらも、住田を唯一理解する同級生の少女、茶沢。
二人を取り囲む、ホームレスや借金取り立てのヤクザたち。

住田と茶沢を演じた、染谷将太と二階堂ふみがベルリン映画祭で、揃って新人賞を受賞した理由は観ればすぐわかる。

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万人受けする映画ではないかもしれない。
だが、はっきりと思うことは、過激で暴力的な内容にも関わらず、園子温が本作で描こうとしたこと、そして何より彼の志は、今の多くの日本の映画監督とは比べ物にならないぐらい、ずば抜けて高尚なものだということだ。

「夢を持ち続けよう」「一生懸命に頑張ろう」「努力すれば報われる」といった、巷に溢れた、一見まっとうな正論に潜む偽善や窮屈さ。
教壇の上では教師が教科書通りの道徳を説き、路上では若者ミュージシャンが薄っぺらな愛を歌う、軽薄さ。

この物語で光があたるのは、そんな正論とは無縁の、不器用な負け組や弱者たちである。
たとえ、本人の選んだものであろうと、避けられない境遇であったとしても――。

住田と茶沢は、もちろん後者の、救い難い大人たちの犠牲者ではあるが、そうした泥まみれの世界から一歩踏み出そうと抗うところに、初めて本物の希望が生まれるのである。

映画は、終わりで、一度は捨てた「頑張ろう」という言葉を、もう一度、絶叫させて幕を閉じる。
それは、東日本大震災をうけ、あえてその後の日本に物語の設定を置き替えた監督の、強いメッセージが込められた絶叫に他ならない。

 
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