想元紳市ブログ

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『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

原作は、9・11後の喪失と再生を描いた現代アメリカ文学の金字塔。

その予備知識だけで観たのだが、いかにもスティーヴン・ダルドリー監督らしい、クライマックスに向って畳みこむような演出に、最後30分はダラダラと泣かされてしまった。

父を9・11同時多発テロで亡くした少年オスカー。
1年たっても父の死の事実を受け入れることができない。元々、他人とのコミュニケーション能力に問題があり、人には見えない歪な殻に閉じこもって、心から血を流し続けている。

ある日、遺品の中に一つの鍵と”Black”と書いたメモを見つける。
探し続けることの大切さを説いていた父。鍵には父の最後のメッセージがあるはずだと信じて、NY中のBlackという名字の人を訪ねて歩く。

さらに、オスカーには、もう一つ誰にも言えない秘密があった。
終盤、ついに秘密を告白するシーンでは劇場内のあっちこっちですすり泣きの声が聞こえた。

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両親をトム・ハンクスとサンドラ・ブロックという二大スターが演じ、しっかりと少年を受け止めているのはもちろん、物言わぬ祖父を演じたマックス・フォン・シドー、不思議な縁のある黒人夫婦を演じたヴィオラ・デイビスとジェフリー・ライトのさりげない名演が泣かせた。

オスカーがつぶやく。

「会ったほとんど人が、みな、それぞれ何らかの大切なものを失っていた」

人が生きていくということは、ところどころで大切なものをいくつも失っていくことであり、自分の中で折り合いをつけながら、喪失と哀しみを背負い続けていくということではないのか?

オスカーがそのことを知ったとき、初めて何かを掴む。

斬新なタイトルは、誰もが逃れられない、この哀しみの感情そのものを指しているように思う。

ダルドリー監督の過去の三作『リトル・ダンサー』『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』は、どれも忘れられない作品だ。
これらは全て、繊細すぎる少年の存在がストーリーの鍵になっている。
バイセクシャルであるダルドリー監督自身の、遠い記憶の光と影が、密かに投影されているように自分には思える。

 
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