想元紳市ブログ

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最相葉月『なんといふ空』

最相葉月は、ベストセラーになった『絶対音感』が有名だが、本書を手にしたきっかけは新聞の投稿欄を読んだこと。

息子にゲイであることをカミングアウトされた母親が相談者で、それに素晴らしい回答をしているのが最相葉月。

回答を引用させていただく――。

「正確な統計はありませんが、いつの時代にも同性愛者は必ず一定の比率でいます。芸能界や接客業だけでなく、会社員やフリーランスで働く人などさまざまです。理解者が増えたとはいえ、世間の風当たりはまだ強い。異性と結婚し、子どもをつくったあとで、カミングアウトについて悩み苦しむ方もおられます。息子さんもあなたに打ち明けるには、大変な決意が必要だったと思います。でもあなたならわかってくれると信じた。息子さんはあなたという理解者を得て、勇気百倍だったことでしょう。
性的指向は変えられません。親が自分を責めることでもありません。息子さんの幸せは息子さんが自分でつかむもの。あなたにできることは最後まで息子さんの味方でいること。努力を認め、応援団であり続けることではないでしょうか。
あなた自身、息子さんを通してもっと多様な生き方、さまざまな価値観の存在に目を開かれ、強くなれるでしょう。それは息子さんからの、すばらしい人生の贈り物だと思います」

本書のタイトル『なんといふ空』は、好きな俳人・種田山頭火の句から。

冒頭の『わが心の町 大阪君のこと』が、とりわけ胸を打つ。

著者が大阪の広告会社に勤めていたころの部下の思い出を綴ったわずか2ページのエッセイだ。

「通天閣と阪急ブレーブスと明石天文台をこよなく愛した友人がいた。彼の名を大阪君という」

この短いエッセイから1本の映画『ココニイルコト』が生まれた。

同じく、山頭火の「ふくろふはふくろふでわたしはわたしでねむれない」という句からとった『ふくろふはふくろふ』では、自分自身のことをわずかに綴っている。

「そう、私はいつも眠れなかった。明日をどう生きていけばいいのかわからず、道に迷っていた」

長いトンネルを通ってきた著者だからこそ、先のような回答が書けるのだろう。

最後に収録されたエッセイで、再び大阪君のことに触れる。

映画化されることになり、著者は、亡くなった大阪君の家族に手紙を送ろうとするが消息がつかめない。
そして、また大阪君の言葉を思い出して、こう終わる。

「『好きなように生きたらええんちゃいますか、はあ』
そやけど、大阪君、好きなように生きるのはむずかしいわ」

 
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