想元紳市ブログ

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『流れる』

浮雲』と並んで、成瀬巳喜男監督の代表作の一つ『流れる』。

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東京を代表した花街、棚橋にあった一軒の置屋を舞台に、芸者たちの悲哀が淡々とした日常の中に描かれる。

この置屋の経営は、実は借金だらけで火の車。
芸者たちの、男をめぐる哀しい裏の顔も明らかになり、それらが、時代の流れで凋落し始めた花街の姿に重なっていく。

女たちを、当時の日本映画を代表する名女優が演じ、さながらオールスターキャストの趣だ。

女将を山田五十鈴、芸者を嫌っている一人娘を高峰秀子、年増の芸者が杉村春子、若手芸者を岡田茉莉子、職業安定所の紹介でやってきた女中が田中絹代。
さらに、女将の姐御に日本映画界初の伝説的大女優、栗島すみ子が久しぶりのカンバック、友情出演という豪華さである。

これだけの女優が、ほぼ密室劇の形で、演技合戦するのだからたまらない。

とりわけ、山田五十鈴の気品ある美しさと、気高い演技に目を見張った。

また、したたかだが情に深い芸者をコミカルに演じた杉村春子。
酔っぱらった杉村と、気の強い高峰が口げんかする場面は痛快ですらある。
男に振られ、置屋も辞めるという杉村に、出てけと啖呵を切るのが高峰だ。

「涙は出るけどね、これはあんたのお見事なご挨拶に泣いたんじゃないんですよ。人を恋しいと思って泣く涙……男知らないあんたなんかにわかるもんか!」

「男を知ってるってことがどうして自慢になるのよ」

「大変なことおっしゃいましたよ、このお嬢さん……女に男はいらないって本当ですか?ねえ、おねえさん」

華やかで、気の強い芸者たちの中にあって、女中だけは、ひたすら従順で優しい、地味な存在である。
明らかに損な役回りをどうして田中絹代が、と思っていると、終盤、実に見事に女中の立ち位置が浮かび上がってくる。

借金を返すために家を売り、心機一転やり直そうと張り切る女たち。
しかし、それが束の間の慰めにしかすぎないことを、唯一知っているのが女中なのだ。

撮影現場は、19年ぶりにカンバックした栗島すみ子が、貫禄のふるまいをし、相当緊張に満ちたものだったらしい。

下町の粋な女たちが纏う着物や浴衣の美しさも、必見だ。


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