想元紳市ブログ

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『白いリボン』

2009年のカンヌでパルムドールを受賞したミヒャエル・ハネケの大人の寓話。

最初の1時間は何度も観るのを止めようかと思ったが、2時間半観終わると、確かに傑作だと納得してしまう。

舞台は、第一次世界大戦直前の、北ドイツにある小さな村だ。
男爵が、村人の半分を雇用し、支配している封建制が生きている。
主人公らしき主人公はいない。
村の不穏な人間関係が、教師の回想の形をとり、おとぎ話のように語られる。

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仕掛けられた針金にひっかかり落馬する医師、彼の子供たちの面倒をみる助産婦、納屋の床が抜けて落下死する小作人の妻、何者かによる男爵の息子の虐待、教師と乳母の恋、納屋での火事と小作人の自殺など……。

いくつもの不可解な事件と絡み合った人間関係は、少しずつ明らかになっていくものの、謎は謎のまま解かれることなく映画は終わってしまう。

静かに浮かび上がってくるのは、絶対的権力者として、家族を支配する父親の存在だ。
彼らは、医師や牧師といった社会的な仮面を持つがゆえに、偽善性は一見覆い隠されているが、奥からは確かに嫌な腐臭がしてくる。

白いリボンとは、牧師が、子供たちの躾のため、純粋無垢の象徴として腕に巻くものである。
巻かれたリボンは、まもなくこの国に台頭する、ナチの党員たちの腕章を思い出させる。

力で抑圧され、育てられた人間は、いとも簡単に力を崇拝するようになるのだ。

物語に出てくる子供たちが、ナチズムの拡大を支えた世代にあたることを思うと、この村は、当時のドイツが抱えていた闇の萌芽を象徴しているのかもしれない。

語り部である教師は、一見善良で、正義感に燃えているように映る。
ところが、観終えると、何やら嫌悪感を覚えるのも不思議だ。

濃淡の濃いモノクロの映像は、時折、息を飲むほどの美しさである。

 
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