想元紳市ブログ

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『裸の島』

TVで放送していた新藤兼人監督の『裸の島』を観て、激しく打ちのめされた。

瀬戸内海に浮かぶ小島に住む4人家族の生活を、一切の台詞を排し、離れたところから、淡々と追い続けた実験的映画である。
モスクワ映画祭グランプリはじめ、多くの国際的な賞を受賞し、世界中で配給されたという。

1960年の製作、夫婦を演じたのは殿山泰司と乙羽信子。

台詞のない映画に2時間近く耐えられるだろうかと観始めたが、後半はひたすら涙。

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電気も水道もない周囲500メートルほどの小さな島に暮らす夫婦と子供二人。
山の斜面を切り開いて作った畑に、さつまいもや麦を植えて育てている。
離れた本土まで小舟を漕ぎ出し、水を入れた桶を運ぶのが、夫婦の日々変わらぬ仕事だ。
長男は小舟に同乗して本土の小学校に通い、次男は海に潜って遊んだりしているが、きちんと家事も分担している。

4人の生活は、人間の原点の姿である。
食べて、働いて、寝る。
移り変わる季節の中、過酷な自然と共存し、ただ毎日を生きていく。
原始的ともいえる生活に、生きるということの本質が鮮やかに浮かび上がる。

いかなる天気の日も、小舟を漕いで水を運び、それを抱えて急斜面を登り、渇いた土壌の畑に、ひたすら何度も水を与え続ける――。
その行為が象徴するのは、まさに人生そのものだ。

たまに家族で本土に出かけ、食堂で外食したり、ちっぽけな買い物をすることがささやかな喜び。
しかし、夏のある日、悲劇が起こる。
長男が高熱で急死するのだ。

その夜、島の高台から、本土の打ち上げ花火大会を茫然と見つめる妻の後姿を見ると、台詞など不要だとさえ思ってしまう。

質素な手作りの棺、喪服などない二人が着るのは普通の白いシャツと浴衣である。
本土からお坊さんと教師、同級生らが参列し、島の頂きで息子の火葬をする。

そして、翌日からは、再び生きるための仕事が待っている。
以前と変わらず、淡々と仕事をしているように見える二人だが、突然、妻は自ら水をぶちまけ、植えた苗を引き抜いて号泣する。
土にへばりつくように泣き崩れる妻。

普段は、誤って水をこぼそうものなら激しく妻を張り倒す夫が、このときは、ただ横でじっと見ているだけだ。

やがて、大地から立ち上がる妻の姿は、人間の逞しさを感じさせて、崇高ですらある。


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