想元紳市ブログ

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『海洋天堂』

ジェット・リー主演の中国映画『海洋天堂』。

物語の舞台は沿海都市の青島(チンタオ)で、主人公の職場は水族館だ。
まるで水中のような青みを帯びた画面など、どこまでもブルーに彩られた世界は、さながら仏映画『グラン・ブルー』のブルーを思い出させるが、本作のブルーはそれよりさらに澄んでいる。

自閉症の息子と末期癌の父親というと、暗くじっとりとした物語を連想しがちだが、本作から受ける印象は、透明感に溢れた無垢な優しさである。

ジェット・リーは、国際的なアクションスターのオーラを完璧に消し去り、どこにでもいる平凡な父親になりきった。
なんでも、脚本に感銘し、ノーギャラでの出演を受諾したのだという。

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冒頭、二人は足に重りを括りつけ、小舟から海に飛び込むシーンで始まるが、父に本当に心中の意志があったのかは甚だ疑問だ。

「魚に生まれていれば、幸せだったのに」と思うほど、息子は泳ぎに長けているのである。
本当に死ぬつもりなら、他に確実な方法を選べたはずだ。

普通の感情表現を持たない息子の、生への確かな執着を確認したかったのではなかろうか?

期待通り、息子は紐を解いて、心中は失敗に終わる。
それから、自分の死後、息子を受け入れてくれる施設探しが始まる。
同時に、バスの乗り方や卵の茹で方など、出来る限り自分一人で生活するための教育を施す。
ところが、行政の壁にも阻まれ、なかなか安心して任せられる施設は見つからない。

「どこかに息子の居場所があるはずだ」

近所で雑貨屋を営む女は、自分が面倒をみると言ってくれるも、父はやんわりと断る。
女の自分に対する好意から派生したものであり、息子に対する思いも同情の域を出ないことに気づいていたからだ。

息子は、サーカスでピエロを演じる若い女と心を通わせるが、それは彼女の中に、遠い記憶にある母親の面影をみたからであろう。

妻は、息子が7歳のとき、海で死んだ。
どうやら息子の病気と向き合う現実に耐えきれず、自ら命をたったらしいこと。

後半はやや甘たっるく、また、感傷的なヒューマニズムを煽る音楽は、少し饒舌すぎると自分は思うが、一方で、終始抑制された監督の演出には、実際に自閉症の施設で14年間ボランティアとして働いた実体験に裏付けられた真摯さが見て取れる。

最後は、息子が水中でしなやかに泳ぐ姿で終わる。
まさしく、そこが彼の居場所であり、横には父の分身が寄りそう。


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