想元紳市ブログ

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『イヴ・サンローラン』

原題は『イヴ・サンローランとピエール・ベルジェ~狂おしい愛』。

これは、サンローランの伝記映画ではなく、公私に渡るパートナーであったベルジェが見たサンローランの姿と二人の愛の物語である。

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50年間、横に付き添い、最後を看取ったベルジェ。

若くしてディオールのデザイナーに抜擢され、「フランスの国宝」「モード界の帝王」と称されるに至るサンローランの表の功績より、むしろ、ベルジュが知る陰の部分にスポットがあたる。

精神的に脆く、過度に繊細で、鬱とプレッシャーから逃れるためアルコールとドラッグに走っていたこと。

サンローランが幸せに見えたのは1年に2回だけだという。
オートクチュールのショーが終わり、ランウェイで観客から喝采を浴びるとき。
その夜か翌朝には、再び苦悩の日々が始まる。

ベルジュが言う。

「名声とは、輝かしい葬列だ」

常に新しい美を創造していかねばならないデザイナーの宿命。

「火が灯されて、人々はやっと火の存在に気づく。芸術家がその火を灯すために、自らの体を焼け焦していることには全く気づかずに」

映画は、2002年のサンローラン自身による引退会見の模様に始まり、2008年の彼の葬儀とベルジェによる弔事へと続く。
その後はエンディングまで、二人が収集した膨大なアート・コレクションを全て競売に出す作業に沿って進む。
クライマックスは、パリのグラン・パレで開催されたクリスティーズによる盛大なオークションの模様だ。

ベルジュは答える。

「もし、自分が先に死んでいたら、イヴは収集したコレクションを手放すことはしなかっただろう」

しかし、ベルジェは手放すことを選んだ。
自分たちの宝の行方を見届けることができて幸せだと説明するが、その思いの深いところは、なかなか容易に読み取ることはできない。

最後も、海辺の別荘で、窓際に佇むベルジェがカメラに向かって振り向く姿で終わる。

結局のところ、このドキュメンタリーが伝えてくる、二人の愛の形は、驚くほど寡黙である。
神話を守ろうとするベルジュの強い意思を感じる。

サンローランの引退を前後に、ファッション界は巨大企業による買収が進み、様相が一変してしまう。
今後、才能あるデザイナーがもてはやされることはあっても、巨匠と呼ばれるに価する人はもう出ないだろうし、また、新たな神話が生まれることもないだろう、とも思う。


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