想元紳市ブログ

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『山の郵便配達』

中国湖南省、山岳の僻地を数日かけ、徒歩で郵便配達する父子の物語。

老いて引退する父が、息子に仕事を引き継ぐための最後の配達である。
道案内をするのは、いつも愛犬のシェパードだ。

物語は淡々と進み、劇的な事件が起きるわけではない。
強いて事件といっても、持っていた手紙が、強風で飛ばされるといった程度である。

しかし、父と子、そして家で留守を守る母は、それぞれ心の内側に複雑な思いを抱えていることが、次第にわかってくる。

これまで留守がちで、家族との時間を持てなかったことに負い目を感じている父。
配達の仕事に誇りを持っているが、本心では、引き継ぐことが息子のためにいいことなのか、自信がない。

その気持ちは、母も同様である。
というより、できれば別の仕事についてほしいと思っていることは明らかだ。

父を、子供のときから遠くに感じ、心を開けないでいた息子は、ある種の嫌悪感すら持っているふしがある。
「お父さん」と呼びかけることもできない。

そんな父子の微妙な思いが、数日を一緒に過ごし、配達先の人々との素朴なふれあいを経て、次第に解き放たれ、やがて親子の絆を取り戻す。

険しい山道を歩いていると、近代的なバスが下を通り過ぎていくのが見える。
息子が、歩いていないでバスを利用したほうが便利だと問いかけると、父は答える。

「道は足で歩かねばならない。楽をしようと思ってはいけない」

無事、帰宅した二人と愛犬を、母が出迎える。

そして、再び、今度は初めて一人で配達に出る息子を、玄関先で見送る父の複雑な表情。
喜び、心配、悲しみ、寂しさなどが、入り混じる。
愛犬すら、家に残るべきか息子に同行すべきか、戸惑っている。
しかし、父の一声で、慌てて息子の後を追う愛犬の後ろ姿が、なんともいえず愛おしい。

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舞台は1980年初頭の中国。
父と子の姿は、急速な変貌を遂げつつある社会で、それぞれの世代を象徴するものでもあろう。
しかし、そうであったとしても、人の日々の営みの中には、変わることなく引き継がれる大事なものがあるにちがいない、と二人と一匹の歩みが伝えてくる。

息子を演じたのは『藍宇』のリウ・イェ。


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