想元紳市ブログ

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中野翠『小津ごのみ』

自他共に認める小津安二郎フリークである中野翠が、小津をテーマに綴った雑誌連載エッセイを一冊にまとめたものだ。
ファッション、インテリア、出演した俳優や役柄について。
また巻末には、中野による、今観られる小津映画全37本の簡単な解説が付いていて、小津ファンなら読み応え十分。

タイトル『小津ごのみ』については、次のように説明する。

「この言葉しか思い浮かばなかった。カメラワークにしろ、セリフにしろ、衣装・小道具・大道具にしろ、小津監督ほど自分の好みに確信を持ち、それを作品の中で貫き通した人というのは、めったにいないと思う」

そして、自身が傾倒する表現者として森茉莉と小津を挙げ、二人とも「自分の好き嫌いを最大唯一のよりどころにできた人」だと指摘する。

自分にとっては、中野翠もまさにそんなライターである。

映画評論家の書く映画批評には、正直、閉口してしまうことも多いのだが、彼女の書くものは一味違う。

基準を自分の好き嫌いに置きながら、「私はこう思う」とあくまでも個人的な考えであることを前提にした文章の、さりげない謙虚さが好きである。

例えば、『東京物語』における原節子の有名な台詞「わたくし、ずるいんです」についても、「いつ奔馬のように走り出すかもしれない欲望の手綱を辛くも押さえている」と分析する某有名評論家に対し、彼女はこう書く。

「私はビックリ仰天した。そんなこと思いつきもしなかった。いい感じはしなかった。私があの場面から受けた印象はまったく違うものだったから」

ちなみに、笠智衆のTVの仕事でのナンバーワンは『ながらえば』だという中野。
自分も全く同感である。


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