想元紳市ブログ

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村上春樹『ノルウェイの森』

なかなか佳作だと思ったトラン・アン・ユン監督の映画化作品を観たあと、原作を再読した。

20年以上前に読んだときとは、明らかに読後感が違う。

主人公ワタナベが、中途半端な男に思えて反感を覚えた一方、前はそれほど印象に残らなかった、年長のレイコに強く魅かれた。

「放っておいても物事は流れるべき方向に流れるし、どれだけベストを尽くしても人は傷つくときは傷つくのです。人生とはそういうものです」

レイコに比べると、ワタナベ含め他の人物たちは、喪失や苦悩の中で、どこか自己憐憫に浸っているようにさえ思える。

登場人物の中で少し異質とも言える存在の永沢に、あえてこう言わせている。

「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」

享楽的で、自己中心的な永沢にこそ、むしろ現実的な大人の姿を見た。

この本にまつわる、悲しい記憶がある。

20数年前、本作を初めて読んだのはカナダに住んでいたときである。
学生時代からの女友達Hが、日本でベストセラーだからとわざわざ航空便で送ってくれたのだ。

Hは、一度カナダまで遊びにきたこともあったし、帰国後もたまに会って食事したりするほどの、数少ない親密な女友達の一人。
そんなHにならカミングアウトしてもいいかも、と思い始めた矢先のことだった。
Hが、突然30代半ばにして、自らの命を絶ったのである。

この物語にある、多くの死と同様のあっけない死だった。

それから10年近くがたってしまった。

「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるのだ」

これは、この物語の根幹を流れるテーマでもある。



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