想元紳市ブログ

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『細雪』

第二次世界大戦前の大阪、船場の上流階級、薪岡四姉妹の物語である。
三女の見合い話を中心に、それ以外、たいした事件も修羅場もない日常の日々。

駄作との評価が主流ではあるが、東宝創立50周年記念の、豪華絢爛なお祭り映画として楽しむと、これほど贅沢な日本映画もなかなか見当たらない。

長女鶴子が岸惠子、次女幸子が佐久間良子、三女雪子が吉永小百合、四女妙子が小手川祐子。
特に佐久間の演技が突出していると自分は思う。

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さらに、横山道代ら、見合いの世話をするご婦人やお手伝いさんなどを演じた脇役の女優陣に、なんとも味がある。

彼女らが次から次へと着用する、着物の豪華さは言うまでもない。
当時の上流階級が纏った着物を再現するために新しく制作された着物が120点、それだけで1億5千万円をかけたというのだから驚く。

おおむね指摘されているように、ヘンデルのオン・ブラ・マイフをシンセサイザー処理した奇妙な音楽は、本作の最大の失敗だと思う。

また、谷崎潤一郎らしい格調や情緒に欠けるのではないか、という指摘。
確かに『犬神家の一族』ではぴたりとはまった市川崑らしさが、ここでは、どうもボタンを一つずつ掛け違ってしまったかのように見える。

それでも、改めて思うのは、監督自身による脚本の巧さだ。
原作は、文庫にして3冊に渡る一大長編。
小説を読めば読むほど、いかに脚本がうまく練り込まれているか、よくわかる。

終盤、旅立つ鶴子が幸子に、そっとつぶやく言葉。

「みんな、ええように行ったらええな」

しかし、後世に生きる我々は、そうならないことを知っている。
まもなく戦争と敗戦を迎え、戦前のよき時代がまたたく間に崩壊することを考えると、ここには確かに、滅びの美学が色濃く映し出されているのである。


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