想元紳市ブログ

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福島次郎『バスタオル』

福島次郎というと、三島由紀夫との赤裸々な同性愛関係を綴った『剣と寒紅』で知られるが、本作は1996年に発表され、初めて芥川賞候補にもなった小説である。

このとき、ホモフォビアで知られる石原慎太郎が、なぜか最も強く推した作品である。

「ここに描かれている高校教師とその生徒との関わりは間違いなく愛であり、しかも哀切である。……この作品だけが私には官能的なものとして読めた」

描かれるのは、高校教師の兵藤と教え子である墨田の、一年に渡る同性愛関係とその後である。

兵藤は、実際、高校教師をしていた福島自身の分身だと見て間違いないだろう。

例えば、次のようなくだりは、生々しい実感にあふれている。

「ことのおこりは、墨田のあまりにも美しい寝顔である。兵藤が、それに吸い寄せられた。が、その前提に、男色者としての兵藤の欲望があった筈だ。偶然のことから、その欲望は水路を得た。初めは肉体的欲望からだったかもしれぬが、繰り返すうちに、親しみと愛情がわいてきていた。そして、こうなった今、自分が本当に求めている根元的なものは、兵藤自身を優しく受け入れてくれるものなのではないかと気づいていた」

別れを切り出されたときの兵藤の動揺も、あまりにリアルだ。

「相手が薄情な別れ方をしようとするので、突然、それに負けぬ非情な別れの切り札を出してみせたくなったのだ」

そのことで、兵藤はかえって苦しむ。

読後感は正直あまりよくない。

別れて2週間後、部屋掃除をしていた兵藤の姪が偶然発見する、異臭を放つ物体。

1年間行為を続けてきた二人が、行為の後に汚れを拭っていたバスタオル。
別れて数日後に、1年の汚れを落とそうと水を張ったバケツに浸けてあったものだった。

しかし、水に浸けたバスタオルが、悲鳴を上げるほどの異臭を放ちはしないことを我々は知っている。

それは、まぎれもなく福島自身の心が放った異臭なのだ。

単行本に収録されたもう一編は、ともに同性愛の兄弟を描いた『蝶のかたみ』。
自分は、『バスタオル』の方を好む。


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