想元紳市ブログ

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蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』

解説に「およそ四年ぶりに読み返してみたけれど、実にいい小説である。そのことは読む前からすでにわかっていたけれど、読み返してみてあらためて"いい小説だなあ”としみじみと感じ入ってしまった」とあるが、まったく同感だ。

蓮見圭一著『水曜の朝、午前三時』。

45歳で逝った直美という一人の女性が、娘の葉子のために遺した4本のテープ。
そこには、今まで語られることのなかった若い頃の激しい恋の物語があった。

「ひと言で語れない真実などどこにもないのだから、大部分は弁解と取られるかもしれないし事実その通りなのですが、世の中には言葉を尽くさなければ伝わらないこともあるのだと信じて始めることにします」

時は70年代。
大阪万博のコンパニオンをしていた直美は一人の男性と出会い、愛し合うようになる。
しかし、男性についてのある事実を知った直美は、彼の元を去る。
その後、別の男性と結婚し、葉子をもうける直美が、過去の自分を振り返って考えること。

「人生をかけて宝物探しをしてきた」

「運命というものは私たちが考えているよりもずっと気まぐれなのです。昨日の怒りや哀しみが、明日には何者にも代え難い喜びに変わっているかもしれないし、事実、この人生はそうしたことの繰り返しなのです」

物語は、葉子の夫である「僕」が語り部になる形で構成されている。
プロローグで、テープの経緯が説明され、エピローグで、直美が亡くなったその後が語られる。
この「僕」、葉子と知り合う前から、直美が憧れの女性だったという設定だ。

読み終えると一本の映画を観終わったような満足感がある。
直美が、人生について、恋愛について、綴る言葉の数々が、強く心に残る。
至るところに散りばめられたアフォリズムが、本作の魅力でもあるのだ。

タイトルの『水曜の朝、午前三時』は、サイモン&ガーファンクルの曲名からとられており、物語の中で重要な役回りとなる、「死ぬべきではない」一人の女性が死んだ時刻である。

直美が好きなキンケゴールの言葉「人間は選択して決意した瞬間に飛躍する」は、そのままこの小説のテーマである。


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