想元紳市ブログ

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『海炭市叙景』

函館出身の作家、佐藤泰志の短編小説を、函館市民含め、多くの尽力で映画化までこぎつけた作品だという。
それなのに、東京でも渋谷ユーロスペースでしか観れないというのはとても寂しい。

舞台になるのは、函館市を模した架空の海炭市。
そこに生活する様々な人間模様をオムニバス形式で描く。

造船所を解雇された兄とひっそり暮らす妹。
開発による立ち退きを求められながら、猫と暮らす老婆。
プラネタリウムに勤める夫は、水商売で働く妻に対する嫉妬に苦しむ。
ガス店の社長は浮気し、ヒステリーの妻は息子に虐待を加えている。
久しぶりに東京から帰郷してきた息子と、市電の運転手をする父親。

どのエピソードも、じっとりとした湿り気を帯び、体の芯まで冷えるような物悲しさが漂う。
だが、どこか懐かしさを覚えるのは、彼らのどの思いにも、必ず思い当たるものがあるからだ。

出てくる誰もがみな、とても幸せそうには見えない。
その悲しみ、寂しさ、苛立ちの源は、決して特殊なものではなく、言ってみれば、どこにでも転がっている類のものである。
当然、どのエピソードにも劇的な修羅場はない。

熊切和嘉監督も、そんな彼らを、淡々と、ただ静かに追っていく。

小林薫、南果歩、加瀬亮ら、俳優陣の演技はみな素晴らしかった。
特に、造船所を解雇された兄を演じた竹原ピストル。
学生時代はボクサーで、現在は歌手である竹原ピストルは、野性的なセクシーさを感じさせ、いかにもゲイ受けしそうだ。

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映画は、終わり近くで、一つの哀しい死がある。

そして、佐藤泰志が、何度か芥川賞の候補になりながら、41歳で自ら命を絶っているという事実は、映画を観終わった後、知った。

 

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