想元紳市ブログ

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アニー・エルノー『シンプルな情熱』

母国フランスのみならず、世界中でベストセラーになった本書。

「昨年の九月以降、私は、ある男性を待つこと ― 彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外、何ひとつしなくなった」

彼と過ごす時間に備えて、酒や果物を買い揃える。
ブティックに入っても彼が気にいるであろう洋服を探す。
彼からの電話のベルが聞こえなくなるのを心配して掃除機やヘアドライヤーを使うのを控える。

妻子ある東欧の外交官と1年にわたる情事を続けた女の赤裸々な告白、というと、女性週刊誌によくあるナルシシズム満載の告白小説のようだが、中身はむしろ対極。

恋愛という情熱にとりつかれたときの心の動きが、まるで精密な機械を一個一個の部品に分解するように、微細に描写される。

「ここでおこなう事実の列挙と記述の内には、アイロニーも自嘲もない。アイロニーや自嘲は、ある物事が自分にとって過去のものとなってしまってから、それを他人たちや自分自身に語るときの方法であって、その物事を体験している最中には用をなさない」

「私には、形容詞一個の位置を変えるよりも、現実からもたらされることになったものを付け加えることのほうが重要だと思える」

本書を絶賛している山田詠美の言葉。
「医師が感情というものの処方箋を作ったらこうなるというくらい、正確な書き方だ」

著者は、モデルとなった男性と別れてから2カ月後にこれを書き始めたのだという。

おそらく、書くという作業によって彼女は前に進み、囚われの身から自分自身を解放することができたはずである。

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