想元紳市ブログ

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ジェームズ・ボールドウィン『ジョヴァンニの部屋』

ジェームズ・ボールドウィン著『ジョヴァンニの部屋』を、自分は何度読み返しただろう。

サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が少年の、シルヴィア・プラスの『ベル・ジャー』が少女の必読書であるならば、この小説はまさにゲイの必読書だ。

アメリカ人青年デイヴィッドは、パリでイタリア人ウェイターのジョヴァンニと恋に落ち、出会った日からアパートで同棲を始める。
しかし、数ヶ月後、婚約者のヘラが旅先からパリに戻ったことから、デイヴィッドはジョバンニをあっさり捨てる。
絶望のジョヴァンニは、退廃の中で悲劇に身を落としていく。

まるで詩のような美しい文章で、デイヴィッドの心の闇が綴られる。

事実に気づいた婚約者のヘラもアメリカへと去り、一人屋敷に残されたところから回想が始まる。

「ぼくはいま、ここ南フランスの宏荘な屋敷の、窓にむかって立っている。夜のとばりがしずかにおりはじめているが、この夜こそは、ぼくの生涯で、もっとも恐ろしい朝へとつながっていく夜なのだ」

「恐ろしい朝」とは、ジョヴァンニが死刑執行される朝である。

ゲイであることを、己の中でいまだ認められない時期の心の葛藤と、それゆえの残酷な行動。

「たぶんだれでもそうであるように、ぼくもずっと若いころには、自殺を考えたこともあった。しかしそれは、復讐のためであった。世界がぼくをどんなにひどく苦しめているかということを、なんとか世間に知らせてやろうとして考えついたことだった。(中略)ぼくが死者のことを考えたのは、かれらの生涯はすでに終わっているのに、ぼくにはまだ自分が自分の生涯をどのようにして全うしたらいいのかわからなかったからだ」

そして、デイヴィッドはこう思うに至る。

「いまにして思えば、ぼくが発見しようと望んでいた自己が、けっきょくは、あんなにも多くの時間をかけて逃避していたのと同じ自己にすぎないのだ……」

本当の絶望を知ったのは、ジョヴァンニではなく、デイヴィッドではなかったか、と思える。

1956年の小説で、ジェームズ・ボールドウィンは黒人作家である。


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