想元紳市ブログ

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伏見憲明『団地の女学生』

『団地の女学生』は、文芸賞を受賞した『魔女の息子』以来7年ぶりの新作だという。

まぎれもなく、ストレートの男性作家にも、女性作家にも書けないゲイ独特の感性で綴られた世界を堪能。
至るところにまぶされた「毒」をむしろ清々しく読んだ。

表題作は、団地に住む老女・瑛子とデブの中年ゲイ・ミノちゃんの短い旅の話だ。
旅の目的は、墓参りと昔の幼馴染の男性に会うこと、ミノちゃんはただの付き添いである。

道中、様々な思い出や回想に浸る瑛子の隣で、ミノちゃんは出会い系掲示板でせっせと夜の相手探しをしている。
この奇妙なランデブーのリアルなこと。
おそらく、著者の実体験ではないだろうか。
いつの間にか、ミノちゃんが今宵の相手を探しだした様子を見て、瑛子はこう思う。

「何だか手品でも見ているようだと思った」

読後感の爽快さはどこから来るのだろう。
お互いに決して分かりあえない、しかし、拒絶するわけでもない、二人の距離感がなんとも心地よい。

この微妙なゆるさ加減は、やはりというか、藤野千夜の小説と共通するものを自分は感じる。

もう一編『爪を噛む女』で、辛辣な毒はさらに濃度を増す。

団地で看護の仕事をしている中年女性・美弥と、歌手として大成功したが今は落ち目の女友達・都が20年ぶりに再会する。

老人に向けたどぎつい悪態は、まるでゲイバーのママの毒舌そのものだ。

嫉妬と羨望、不公平感を何年も抱き続けた美弥だが、介護で接する老人たちを見ているうちに、悟ることがある。

「人間の一生というのは、語りえないもののなかにこそその人の生きた本当があるのだ」

美弥は、「人がこの世界に関わるということの不可思議さと謎」、つまり、他者との微妙な距離感を測ることの重要性にハタと気づくのである。


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