想元紳市ブログ

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三島由紀夫『黒蜥蜴』

映画『おろち』で描かれた、昭和の上流階級の日常や言葉遣いに物足りなさを覚え、ふいに思い出したのが三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』である。

何度読み返しても、三島らしいきらびやかな台詞、格調高い装飾と比喩の世界に、目もくらむばかりだ。

「危機というものは退屈の中にしかありません。退屈の白い紙の中から、突然焙り出しの文字が浮び上る。僕はそれを待っているんです」

「犯罪が近づくと夜は生き物になるのです。僕はこういう夜を沢山知っています。夜が急に脈を打ちはじめ、温かい体温に充ち、…とどのつまりは、その夜が犯罪を迎え入れ、犯罪と一緒に寝るんです。時には血を流して…」

何度も舞台化、映画化されている本作。
しかし、緑川夫人=黒蜥蜴は、やはり丸山明宏の独壇場だったとしか思えない。
男と女の垣根を軽々と行き来し、強い意志と深い孤独、悪意と良心、相反する二つのものを同時に合わせ持つ、複雑な人間性を完璧に表現しえたのは丸山明宏しかいないとさえ思ってしまう。

『黒蜥蜴』の2007年の文庫版には、三島本人による解説文のほか、座談会が一つ、対談が一つ、最後に美輪明宏によるあとがきが収録されている。

座談会は、三島、原作者の江戸川乱歩、初演で明智を演じた芥川比呂志、杉村春子ら。
これだけの面子にあって、杉村が堂々と自説を述べるくだりなど、さすが昔の女優は人間としての厚みが違う。
最後は、このメンバーで当時流行していた「こっくりさん」をやり始めるというオチ付き。

対談は三島と丸山明宏によるもの。
二人の対談のうち活字になって残っている唯一のものらしく、必読だ。
昭和44年、対談が雑誌に掲載された当時のタイトルが、「十年後、BI(バイ)セクジュアル時代がやってくる?!」。

なかで、丸山が三島の前世は高山右近だと指摘し、「よくよく人を斬るのがお好きなんですね」というくだりは少々ぞっとする。

あとがきでは、黒蜥蜴を演じることになった経緯、当時の三島の印象のほか、台詞の深い意味合いについても解説していて興味深い。


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